そもそも席替えをして隣に自分が望んでいる人が来る確立なんてゼロに等しいわけであって、私は私の友人みたいに高望みしながら席替えの日を待っていたわけじゃない。その私の友人はというと、意中の相手の隣になれるようにと念力まで送り出す始末だ。うわー、すごいやる気。
まぁ、欲を言えば、窓際の、それも一番後ろだったらものすごくラッキーだなあ、なんて思ってはいたものの、その前後左右に誰が座ろうと、さして支障はなかった。あ、窓際の場合は左手には人間はいないのか。そういえば、この間見た青春系ドラマの再放送でも席替えをやってたな。主人公の男の子の隣に座った女の子が実はすごい所のお嬢様だったっていう話だ。
確か、そのあとベタベタな展開でその2人はカップルになったんだっけ。いやいや、隣に座った女の子がお嬢様とかありえないでしょ。そしたら、何? 次に私の隣に座る子は、魔法使いとかマフィアとか、あ、まさかの神様とか。そんなのチンケなドラマの中だけだ。そんなことを考えていた15分前までの私、一回滅びろ。


「ねぇ、そんなに必死に俺から顔を背けなくてもいいだろ?」
『……』
「ふふふ、わかった。其れが君なりの表現だっていうのなら、俺はそんな羽島ごと受け止めるよ」
『え、いや、あの』
「あは、めちゃくちゃ顔引きつってるね」


やべ。隣に神の子来ました。

ど、どどどどうしよう。
なんで何がどうなってこんな状況になってるんだろう。え、私何か悪いことした?
クラスメイトの痛い視線を全身で感じながら私は、今すぐにこの場所から、全速力で逃げ出したい気持ちで仕方ない。
確かに隣の席にいるのは人間だけど。だけどだけど人間じゃないっ。
立海大の王子様的な存在の男。いや、私は別に幸村君とやらに興味はなかったのだけど、私の周囲の友人は皆この男の虜だったわけで。……なんでよりもよって私なんかに話しかけるんだろうか。というかというか。どうしてこの学校1のもてもて王子様が私の隣に……。私はただ静かに暮らせればよかったんですが。


「在り来たりじゃないか、こういう展開」
『は?』
「学園青春ラブコメディーには」


いや、いやいやいや?!
一体君はなにを言ってるんだ!なんて思いながらも、目の前で爽やかに笑う幸村君はなんだかものすごく楽しそうでした。


01



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