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浮かばれない気泡




 あの出会いから、数日が経過した頃。
 臨時評議会は解散の目処が立ち、イザークはザフトへの復帰にあわせて白服への昇格が決まった。
 ディアッカとシホも当然のようについていくことになり…目下、評議会ビルでの後片付けに追われていた。
 今日は評議会ビルで過ごす最後の日だった。

「この部屋とも今日でおさらばだな。…なんか寂しいカンジ?」
「………ああ」
「…あのー、イザーク? さん?」
「………ああ」
「……おい、聞いてる? てか生きてる? まさか疲れのあまりとうとうそのおかっぱ頭が…」
「…殺されたいか貴様」
「謹んで遠慮しときます。つぅかどうしたわけ? さっきから」

 あの「イザークを追い返して寝かせよう作戦」以来、何やらぼんやりしたり、かと思えばいきなりイライラしたりと様子がおかしい。生来の性格だろう、イザークはもともと感情を抑制するのが巧いほうではない。それがわかりやすく、清潔な率直さでもあり、癇癪の種でもあるのだが―――最近はとくにそれが顕著だった。
 ちゃんと休んだのかと心配したものの、百面相の原因が、イザークがさっきから熱中しているデータにあるらしいこともすぐ知れた。

「…エヴァンジェリン? え、女!?」
「なっ、貴様勝手に見るな!!」
「だって見せてくれっつっても見せてくれないだろ?」
「当たり前だ!!」

 誰が貴様に見せるか!!…とパソコンの向きまで変えるイザーク。だがディアッカも画面に映っていたのが複数の女性のデータだったことに目ざとく気づいていた。

「なぁなになに? 彼女? 見合い?」
「………貴様には関係ないだろう!」
「んな水くさいこと言うなよ、お前と俺の仲じゃん。どんなコ? 可愛い?」
「………っ!!」

 バシン!…とノートパソコンを閉めるイザーク。その頬は心なしか赤い。

「ま〜さかイザークに春が来るとはねぇ…っとぉ危なっ!!」

 顔面に飛んできた鉄拳をすんでのところで避けるディアッカ。…こんなところはコーディネイターである。
 イザークは閉じたノートパソコンを重いためいきとともに仕舞い込んだ。

「……さっさと支度しろ、もう出るぞ」
「マジで? まだ時間あるぜ。てかさっきのコはもういいわけ?」
「放っておけ!!」

 ―――正直に告白すれば、別に調べたくないわけではない。ディアッカに邪魔された、それもあるにはある。だが決定的な理由はそれではなく。

(なんであの女のデータがない!?)




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