「快斗兄ちゃんってば〜!」


「ダメ!絶対ダメ!」






ごく普通の黒羽家のリビングに
珍しくコナンの甘えた声が響いている



それに対して

普段そちら側の役回りの快斗は
憮然とした表情のまま
テレビのチャンネルを変えた






「頼むっ!今日までなんだよ、な?」

「だーめーでーすー!」




お願い!と言うように両手を合わせるコナンに負けないように

快斗は、コナンがコピーした
机の上の用紙を睨みつけた





洒落た装飾を施した文字は


流麗な書体で
”シャーロック・ホームズの世界へ”
と書かれている



内容はよく見ていないが
何やらシャーロキアン同士が語らう
ちょっとしたパーティーらしい



そしてコナンにとって問題なのは
その場所と時間だ




開催されるのは此処から約10km離れた町

もちろん米花町からはもっと遠い



時間は午後20時開始との事


ネットでこの情報を手に入れたコナンは

”18歳未満のお子様は
保護者同伴でお越し下さい”
との注意書きを見て
快斗の下へ走った



頼みの博士が風邪で寝込んでいては
大人に変装できる恋人を頼るのが最善だと判断したようだ



よって、快斗は今
涙を溜めた瞳のコナンに


「快斗兄ちゃんしか居ないんだよ…?」


と見つめられているのである




「っ…だ、だめ!
騙されないからな!」



破壊力抜群な表情に

ぐらりと傾きそうになる意思を押し戻し
頑なに断る



瞳の形を丸くした幼い様子に
普段とのギャップを感じて心臓が忙しないが

それでも心を鬼にして
誘いを断る理由は一つ







「だって絶対アイツが来るだろ!」






アイツ――



言わずもがな
自称フェミニストな
ホームズオタクコスプレ探偵、
白馬探の事だ




『今日は僕の家に泊まって
じっくりホームズトークしないかい?』



なんて言われたら
音符付きで着いて行きそうな今のコナンを
そんな危険な目になんか合わせるものか。


第一目の前で
二人にしか解らない話されるのも癪だし。

快斗は頬を膨らませた。


「今度新刊の
ミステリー買ってきてあげるから、ね?」




そんな快斗をどうにか引き込もうと
プライドをかなぐり捨てたコナンが駄々をこねる「やだやだやだ〜!!
イきたいイきたいイきたい〜!」


「そ、そそそんな言葉
連呼しちゃだめでしょ!!」




いや多分コナンの中では”行きたい”なのだが、

どうしてもぴょんぴょんと小さく跳ねながら
大きな瞳で見つめられたら愛しさとは別の
危うい感情が顔を出しそうになる



コナン自体が可愛いのもあるが

それ以上に
中身の新一がその行動をとっている
と言う事実に頭がのぼせそうだ




「快斗兄ちゃん
僕のこときらいなの?」

「え、ちょ、ちょっ!!」






ソファによじ登り、
膝の上に乗っかる仕草は
7歳児としては普通かもしれないが

中身が高校生では
間違いなく相手の欲情を覚ます為の行動でしかない



さすがに鼻同士が
くっついてしまいそうな程に顔を寄せられたら
無視する訳にもいかなくて困る


いや、この探偵の場合
それを推理しての行動だろうか。



「ん、んな訳ないじゃん…」




ぐるぐると頭の中が忙しい


普段見れない、可愛さを前面に押し出してくる彼を

今すぐ抱きしめて
狂ったように愛でたくなる






「なら良いでしょ?快斗にーちゃん」






実際、これがコナンの捨て身の作戦だと解っていても




小首を傾げて見上げてくる顔から目が離せない





(あああ可愛いなもう…!!!)




じんわりと伝わる胸辺りの体温に
押し戻された脆い理性が再び傾き始めた



顔が熱くなり
頬には変な汗まで流れてしまう



にっこりと笑った顔が
まるで天使のようで、唾を飲んだ




そんな時に、追い打ちをかけるように







「かいとにーちゃん、
僕イきたいんだ…」







なんて切なげに呟かれて堪えれる男は
果たして実在するのだろうか



居るとすれば、
ぜひその技を伝授したいものだ







「……………」





「…?
おい、聞いてんのか…って、うわッ!!!」

「コナンちゃん!!」





固まってしまった快斗の頬を
素に戻ったコナンがぺちぺちと叩いた瞬間


彼の小さな身体は

ガバッと腹を空かした獣のように飛びかかってきた快斗によって
ソファに横たえられた



簡単に言うと、
いきなり押し倒されたと言った方が解りやすい




「、何だよ…んっ」





文句を言おうとする唇を唇で塞ぐ



「…っん!〜〜っ!」



不満そうに何かを訴えたい様子だがわざと音をたてて舌を吸うと
真っ赤になって顔が蕩けた



「んんっ……」



夢中になってコナンの咥内を味わい終え共に肩で息をする






「な、にすん…だよっ」





瞳を潤わせたコナンが睨みつけてくるが

やはり頬を染めたその顔と
先程の幼い物とのギャップが興奮を煽る






「…だってコナンが誘ったんだもん」


「はぁ!?」”何言ってんだコイツ”
と蒼い瞳が物語っていたが


世の中の男は皆狼だと言う事を

あれだけやっておいて無自覚な
この恐ろしい恋人に教えてあげなければ。





じたばたと暴れるコナンの耳に唇を寄せ
とびきり低い声色で囁く





「…気持ち良いのは嫌いか?名探偵」



「――――ッ!!」





案の定、コナンの顔が一瞬で
茹で蛸よりも真っ赤になった



「ず、ずりぃぞ…お前」



キッドの声で甘く甘く囁かれるのに
どうにも弱いコナンのポロシャツを脱がす



先程まで追い詰められてた立場が逆転し
大分落ち着いた




しかし、ふっと頭を掠める予感



……もし、このまま連れて行って
先程の可愛い表情(かお)を
無意識に白馬に向けたら…





「…コナンちゃん」


「……ンだよ」




何だかんだ言って
気持ち良い事が好きなコナンは
大人しくなったようだ






決めた

あんなに可愛いコトする子は





「足腰立てなくなるまで
可愛いがってあげるね」





そう言って快斗はもう一度
狼のように飛びついた














その夜





もちろん宣言通りに
足腰立たなくされたコナンが
パーティーに間に合わなかったのは言うまでもない




そしてまた






「ありえねぇ!!
お前ホントありえねぇ!!!」


「ごめ、コナンちゃ、
ごめんってば〜!」





怒り狂ったコナンに対して

今度は快斗がぶりっ子する番だと言う事も
言うまでもないだろう


















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タイトルの長さはご愛嬌です


出雲様よりフリリク
「ぶりっこコナンくん炸裂に
快斗がメロメロで最終的には襲う」

でした!
まぁなんて面白そうなリクエストだこと…!

快ちゃんがもっと
めろめろであれば
良かったかなぁと!すみません!



しかし書き手は楽しかったです。主に
ぶりっコナンとか
ぶりっコナンとか
ぶりっコナンとか。


出雲様、楽しいリクエスト
ありがとうございました\^0^/!



うめこうめ













↓おまけ↓






「おいコナン」


「ん?どうしたの?おじさん」





いつものように事件現場で推理していると
おっちゃんが不思議そうに話しかけて来た





「…お前、最近減ったんじゃねーか?
あれれ〜?とか、おーかしいぞー?とか」



「………え゛」






何か手がかりでも見つけたかと思ったのに
嫌な思い出を引っ張り出されて
頬が引き攣る







「……ああ、アレ止めたんだ」



「ほぉ…何でまた」










―――だって














「変な人が、勘違いするかもしれないでしょ?」










例えば、今そこで鑑識に化けてる

心配性な変態とかにね。
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