大半の国民が堂々と休める日





要は祭日のトロピカルランドは
見渡す限り人、人、人




どれも皆にこやかに
明るい笑顔を絶やしていない










「えへっ…えへへへっ」









しかし真に残念な事に
隣に居る恋人は

明るいどころか
気持ち悪いニヤケ顔を晒していた








「…快斗、気持ち悪ィんだけど」






出来る事なら、他人のフリを
してしまいたいくらい気持ち悪い


デレッデレに腑抜けた顔を見ないように
新一は少し前を歩く







「だって!新一とデートしてんだよ!?」




俺今新一とデートしてんだよ!?
と、わざわざ2回言い直す快斗



しかし新一の機嫌は最大級に悪かった






「…コレの何処がデートだよ」







本日乗った乗り物












観覧車














以上。






ちなみに、7回


回数だけは立派である






「何で遊園地で
観覧車しか乗ってねーんだよ!!」




ガッデム!と今にも叫び出しそうな新一を気にする事もなく

快斗はひたすら「嘆いてる姿も可愛いなあv」
と愛でていた












新一の間違いは
朝、快斗からデートの誘いを受けた事である




いや、「受けた」と言うよりは
「受けてしまった」と言った方が正しい





「デートしようよしんいち〜!」と

1分に1回言われ続ければ
ちょっとした恐喝である。もしくは催眠か。







しかし、そこまでは
この男と過ごしていれば日常茶飯事だ



問題は、鉛のように重い腰を上げ
来たからには楽しんでやろうと思った矢先の一言













「絶叫系とホラー系は駄目だからね」




















ひとしきり新一が嘆いて
園内にあるイートスペースで一休み


向かい合わせの新一が睨んでる




しかしその拗ねたような表情も
冷静な一面とは違って可愛いすぎると感じてしまう



快斗は高すぎるメロンソーダを吸いきって口を開いた







「しょうがないだろ?


新一を事故にあう可能性に晒すのは駄目だし

新一が幽霊に紛した他人に
ベタベタ触られるなんて論外なんだから」






当然、という風に腕を組むと
新一に大きくため息をつかれる






「じゃあ何で連れて来たんだよ…」


「だって新一とデートしたかったんだもん!」


「だもんって…あのなぁ…」






頭を抱える恋人を見ても
表情筋が緩みまくる





困った顔も可愛いよしんいち!






「えへへ〜」



「何笑ってんだ…
っていうか、前者の理論は良いとしても
後者は何なんだよ」






ハートマークを新一に向けて連射していると
またもや怒りを通り越して
呆れ返った新一に睨まれる






「他人にベタベタ触られるって所?」


「ああ。
それは別に相手の仕事だから良いだろ?」






「……………は?」







何か聞き捨てならない発言が飛び出した気がする






「それじゃ何!
新一は変質者に触られても
”これが僕の仕事です”
って言われたら許すのかよ!?」






突然起立し憤慨した自分に
新一と近くに居た少年が驚いていたが気にしない



ビシッと新一の(可愛い)顔を指を差し
問いただした




「いや、それとこれとは」

「違うくない!
大体俺以外に新ちゃんに
ベタベタして良い奴なんか…いな、い…?」







ところが
ふとある考えが過ぎり身体が固まる







いや、待て
よく考えろ黒羽快斗







「……………」

「…おい、快斗?」






新一が目の前で手を振ってみても反応しない






しかし突然
立ったまま固まっている快斗の頭に

ピコン、と古い漫画の様に電球が飛び出した









幽霊役が新一「に」ベタベタするのは駄目だ




だが
幽霊役に怯えた新一「が」
自分にベタベタするのはどうだ?







更に言えば
新一から幽霊役を遠ざけ
新一が触られるリスクを無くし、


あわよくば
”快斗ってスゲーな!”
と爛々たる瞳で見つめられるとしたら…!?









「…新一」


「な、なんだよ」






ガシッと目の前で振られていた手をとる










「行こう、俺の夢の場所へ」


「……は?」









後に新一が言うには
この時手を引いてお化け屋敷に向かう自分は

今までで最高に嬉しそうな顔だったらしい












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