先程までの喧騒は
扉が閉まると同時にピタリと止んだ



ようやく静かになった阿笠邸で、
哀は紅茶を一口啜る



元に戻ったコナンに
変装姿ゆえに
「お兄さん誰?」とまた尋ねられた怪盗は

言葉を濁しながら
ホッとした顔で帰っていったところだ




本当、ご苦労様




怪盗にそう合掌し
紅茶を飲み一息ついた哀は
コナンに一言だけ言った











「…さすが、女優の息子ってとこね」
























「あいつの事、好きかも
しれねーんだけど…」




検査室で顔を真っ赤にしたコナンにそう言われた時
思わず持っていたライトを落としてしまった





「…どういう事?」


「だ、だから、キッドの事が気になって」

「問題はソコじゃないわ」



ピシャリと強く言い放つ


そりゃまあ性別とか
立場の問題とか、
ツッコミたい部分はたくさんあるが


「何でこんなマネしたのかって聞いてんのよ」




そう、彼は退行なんてしていない。

昨日も、もちろん今日も。



完璧に7歳児のフリをしてみせたのだ


今この時まで、この私さえも騙して。



恨めしげに睨むと
乙女のようにもじもじとした
コナンが途切れ途切れに独白し始めた



頭痛に耐えながら聞いた内容を
要約するとこうだ




最近ずっとキッドの事を考えてしまう

それは逮捕願望云々ではなく、
恋愛感情だと気づいてしまった



意識しだしたら
好きな相手の気持ちが
気になってしまうのは自然の節理



「…って訳で、キッドの
気持ちを調査しようと思ってさ」



「でも普段じゃとてもじゃないけど言えないから、
幼児のフリをした?」




そう言うと
「おう」ヘヘッと笑うコナン

名探偵の面影はない



どんどん浮かび上がってくる真実に
哀の小さな身体は押し潰されそうだった




「アナタねぇ…」



熱が出た時も、あのきょとんとした表情も
全て演技だったのか


あの保護者二人への
言い訳に悩んでいた
自分が馬鹿みたいだ



「悪ぃ悪ぃ…
ほら、敵を欺くなら
まず味方からって言うだろ?」



ニカッと楽しそうに
笑うコナンを見て
また頭痛が酷くなった気がする




「だからさ、灰原も協力してくれねーか?」


「…どうでも良いけど、
もし彼にバレたらどうするのよ」

絶対素顔を見るための
罠だと思うわよ、彼。


と指摘すると



「バーロー!誰がそんなヘマすっか!」



と、女優の息子は胸を張った






そして見事に有言実行した彼は今、

またもや目の前で
真っ赤になって呟いている





「……でさ、
今度はどうやって告白しよっかなって…」




どうやら蘭達が帰ってくる明後日まで
延々と相談されるだろう予感に
げんなりとした哀は


紅茶にいつもの倍の砂糖を加えることにした



















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見毛相馬

(意味)

見かけで判断すると間違えが多いというたとえ



って訳で悪どいコナン君をば
騙されっぱなしのKidさま



遅くなりましたが
御来場かんしゃかんしゃです…!



うめこうめ




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