時計の長針が半周し
物語も中盤になったころ






「ねー新一」





珍しく大人しく鑑賞
していた快斗が口を開いた




「んー?」


「これは俺への嫌がらせかな」

「何でだよ?」




きょとんと瞳を丸くさせる新一の横で
快斗は最初の勢いを鎮火させ
不満気に口を開いた





「だあって、新一と服部の
いちゃいちゃシーンばっかなんだもん!」



「…いっ!?」





予想外の事を指摘された新一が
怒りで顔を真っ赤にさせて否定する。
それがまた気に食わない

「どこがイチャイチャしてんだよ!?」



「してるじゃん!!服部と京都の町
デートして昼飯食って!
今だってバイク2ケツして…
あー!!新一が振り落とされそう!!」



「デートじゃなくて調査だ!
バイクは犯人を追うために」



「うわ!色黒テメェ!
新一乗せて無茶すんな!」




テレビにへばり付いて文句を言う恋人は
まるで子供の様だ


というか、こちらの話は
毛頭聞いていないらしい




「電車危ねぇよ!!
飛びこせよ!」




怒りで我を見失っているらしく
ついに非現実的な事まで言出した


かと思ったら
ガバッと俺の肩を掴んで
「怪我してない!?」と泣きついてくる



つくづく新一の事となると
心配性で溺愛な男へと変貌する奴だ





「怪我なんてしてねーし、
俺も服部も後でこれより危ない目に」

「もっと危ない目に合うっての!?」





この世の終わりの様に破顔されると


後に剣で切り殺されそうになったり
見せ場である服部との連携プレーの事は

とても口に出せない新一だった

















『…巡る…〜♪』
画面の中では美しい実写の風景が流れている
そしてそれにマッチする歌声も。



つまるところ、
十字路での物語が終演を迎えたのだ




「……………」


「……………」




快斗は黙っている
それにつられて新一も黙っている、
ちらちらと横顔を盗み見ながら。



中盤までギャーコラ騒いでいた快斗は
服部が活躍する後半部分に向かって
段々と無言になったまま今に至る


しかめっ面な所を見ると、
中々に不機嫌なのには違いないが。





「…千歩譲って、
服部のフリして助けに行ったのは許す」




画面を見据えながら唇だけが動いた

新一は肩を竦めながら続きを待つ




「でも!その為に
あんな無茶すんのはダメ!!」





勢い良くこちらに向けられた顔は
今にも泣きそうな顔でギクリとした


高熱で動き回った自分を
心配しての言葉だと解る




「快斗」


「こんな事あったなんて知らなかった」




細く呟かれた言葉は寂しそうだ





「新一いっつも無理するじゃんか」


「…おう」


「爆発に巻き込まれたりするじゃんか」
「…割とな」


「新一が、俺の知らない所で
危ない目に合うのが……やだ」


「…ごめんな快斗」


快斗がそんな事を
思っていたなんて知らなかった


これまで事件の内容を
平気で報告してきた自分を責める




耳があれば垂れ下がっている状態の
快斗の髪を撫でる


新一が無理をしないと
多くの犠牲者が出てしまう事は
快斗だって解っている


しかし理屈と感情は
常々裏返しの存在だ

それは新一にとっても同じだった



「俺だって快斗が
キッドとして危ない目に合うのは嫌だ」



うなだれていた快斗が顔を上げる。
罰が悪そうな顔が見えた。




「でも、それは必要な事なんだろ?」

「…うん」



神妙な顔をして数秒間思案した快斗は
結論が出たらしく、小さく微笑んだ




「お互い様だね俺達」



つられて新一も穏やかに笑う



「心配しつつされつつ、だな」


「これって良く考えたら
いつもお互いの事想ってるって事だよね〜」



ラブラブじゃん、
と一変して幸せオーラ全開の
快斗に軽く口づけられた


今更ながら何だか言った事が
気恥ずかしくなって
顔に熱が集まった



「バーロ…ん」



2回目の口づけは深く

舌を味わうように吸われて
酸素不足とは別に
頭がボウッとしてくる



このままなし崩しになるのか、と
どこか遠くで考えていると
「あ」と快斗が唇を離した


「……?」


不思議に思って
結んでいた瞼を開くと
黒い笑顔が視界を覆っていた






「でもアイツには、
きっちり仕返ししないとね」



















後日 大阪府






工藤新一の姿の快斗は
そのままの格好で











「オメーなんか大っ嫌いだバーロォ!!」













工藤大好き色黒関西弁男に言ってやったそうだ


















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平次の映画なのに
平次が相変わらず平次
平次の服盗んだのね新ちゃん!




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