「あっちぃー…」




目を棒にしてうだる快斗



勝手知ったる顔で工藤邸の門をくぐり、冷凍庫を開ける

まるで自分の家のようにチョコアイスを取り出した



「はい、コナンちゃんも食べるだろ?」



「お、サンキュ……
って此処は俺の家だろうが!」



思わず礼を言いそうになったが踏みとどまると
ヘヘッと悪戯っ子のように笑われた




(…ったく)



ソーダアイスの袋を破る


出かけ先で買った新刊のミステリーを取り出す


封を開けるこの瞬間がたまらなく好きだ



8月のこの暑さのせいで少し暖かくなってしまっているが気にしない

丁寧に袋を開ける




「はー…あっちぃ。
なークーラーつけよーよー」



「っせーなー。
冷房嫌いなんだよ俺。
扇風機あっから付けてろ」




ビッと扇風機を指さす

どうにも冷房はあの冷え過ぎる感じが好きになれないので、冷房は付けない主義だ


快斗は「うー」と唸ったが、
さすがに他人の家という事を考慮したのか

しぶしぶ扇風機の前に座った




それを確認してからソファに腰を下ろす





蝉の鳴き声だけが聞こえる静かな時間が続いた

猛暑の中、アイスもあっという間に溶けてなくなってしまうしかしその沈黙が守られたのは
わずかに最初の数分だけだった







「あっついー」



「………………」



「暑いー」



「………………」



「あ゛ぁーつ゛ぅーい゛ぃー」






………ブチリ







何かが切れる音がした






「っせぇな!!」



新刊を投げる訳にはいかず、近くにあった枕をぶん投げた。

ボフッと鈍い音がする


どうやら宇宙人ごっこをしていた幼稚な高校生に当たったようだ



だって暑いんだもんと涙目で訴えられたこちらは
逆に寒気が止まらない



「仕方ないなぁ…」



仕方ないのはコッチだと心の中でツッコミながら、本に視線を戻す


それもつかの間、
何やらゴソゴソと扇風機の方から音がしたので反射的に見てみると




「――――なっ!!!」




そこには露出の多い…

というか
下着姿の快斗が居た



はーっとオッサンくさくため息を吐いて
汗ばんだ肌を扇風機に晒している



開いた口を閉じれない俺には気づかず
またもや勝手に
拝借したタオルで顔を拭いている快斗から
慌てて視線をそらす






(た、たかが下着姿じゃねぇか…)妙に早くなった鼓動には気づかないフリをして、文章に視線を戻す



それでもどうしても気になってしまって

本で顔を隠しながら盗み見てしまう



割とハードな怪盗業を営んでいるせいか
ちゃんと筋肉はあって無駄な脂肪はほとんど無い



普段の情事の最中は
俺が電気を消せと頼むから

こうしてまじまじと快斗の身体を見るのは初めてだ



けれど少し汗ばんだその姿に
思わず情事を連想してしまって赤面する





(顔は似てっけど…
か、身体はやっぱ違うんだな…)





自身もサッカーで鍛えていたとは言え
基本的に線が細い


対照的な快斗の男らしい身体つきに、ドキドキと心が波打つ



かぶりを振って読書をしても
集中力が発揮できない







「か、快斗」


「ん?」



「冷房つけていっから…
その…服着ろよな」




というかむしろ着てくれと言う意味を込めて言ったのに

ヤツは
「コナンちゃんが寒くなるくらいなら良いよ」と笑った






――だから、着てくれねぇとコッチが困るんだっつーの!




なんて事はもちろん言えるはずも無く




ただただ快斗の汗が引いて
服を着てくれるのを
終始赤い顔で待つ



そんな俺の方を見て何を思ったか、
快斗が扇風機を片手に近づいてきた



「な、おい、何だよ!」



「いや…だってコナンちゃんも暑いかなって…顔、赤いよ?」




「バーロ!良いからあっちいけ!」



「駄目だよ、熱中症は怖いんだから」






ならクーラーつけるから頼むから寄るな!

と心の中で何度シャウトしても
快斗はおかまいなしに俺の隣へ腰を下ろす


さっきより何倍も近くなった身体のせいで
不自然に視線が泳いでしまう




こんな気持ち、本格的にやばい

コイツのこういう姿を見て欲情してしまうなんてどうかしてる





「…コナンちゃん?さっきから全然ページ捲ってないけど…」



「えっ?あ、ああ!」



怪訝そうな快斗に指摘されて慌てて一気にまくる

すると逆に「そんなに早く読めるの?」と笑われた





「どうした?
おいまさか、ホントに熱中症なってんじゃないの?」


「っ」



見当違いな心配をした快斗の顔に
勢い良く覗き込まれてギクリとする




(うわ、わ、わ)



シートベルトのように回された腕が

まるで抱きかかえられているイメージを与えて
顔が一層熱くなる





「ちが、あの、そういうんじゃなくて…」






自分でも思うくらい珍しくワタワタと取り乱した俺を見て


鋭いコイツは気がついてしまったらしい






「…あー、ナルホドね」






にやり、と
先程からは想像もつかないような変態じみた笑みを浮かべ
俺を上目遣いにうかがう



その目は明らかに
「やらしーのコナンちゃん」
と言っていた







それから後は、
余計にアツくなる事をされたのは言うまでもない。





今後から快斗が来た時は
ためらわず冷房を入れようと思ったコナンだった





























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匿名様リクエスト
「快斗の裸(下着姿)
を見て照れちゃうコナン」
でした!^^

普段は快斗が江戸川に
ドキドキしている事が多いのですが
逆もとても楽しいですね!
ドキドキ江戸川!^ω^


匿名様、愛で隊に入隊して下さって
本当にありがとうございました!





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