俺がまだ警部としては新米だった頃



怪盗1412号は正に全盛期



鮮やかな手口と
気に喰わない気障な台詞を残していく怪盗野郎



そのくらいの印象しかなかった





「…なのに、今はどうだ」




時価数千万の宝石の隣で呟く



お気に入りの緑のスーツは、きちんとクリーニング済み






いつからだろうか



奴の犯行現場に向かうのに

正義感とは違う感情がくっついて来たのは





(刑事と怪盗…それも男って…俺の人生どうなっていくんだよ)




はぁっ…と大きくため息をつく


それでもこの大勢の部下の中に1412号が混じっているかと思うと
意図せず顔が赤くなってしまう



鼓動は高鳴るし、変な汗は出てくるし



これは



「ヤベーよなぁ…」










「何が”ヤベー”んです?警部」


「っ!!」



いつの間にか隣に立っていた警官


帽子を目深に被っているが

この気配の消し方、
身のこなし



間違いない



「か…怪盗1412号ォ!!」





俺が叫ぶと同時に
その口元が不敵に笑った





「さすが警部。すぐにバレてしまいましたか」




彼はいつものように
マジシャンさながらに警官の衣装を剥ぐ



現れるのは、いつもの胡散臭い白い衣装




「捕まえろおおぉ!!」



俺の怒号で、何百という部下が走り出した



そして自分も走り出す



(絶対…絶対捕まえてやるからな!!)





この執着心に
刑事としてでは無く

禁忌の感情がある事は無視できない



ヒラヒラと嘲笑う様に跳びかかる警官を避ける1412号



一見俺と同年代に見えるその身体の
どこに体力が残っているのか



階段を駆け登って
息を切らしているとそう思う




百を越していた部下は、登るから途中でどんどんと奴に阻まれ

屋上の扉を開ける頃には
気づけば俺だけになっていた





「はあ…はあ…
絶対に…捕まえてやるぞぉ…!」


「本当に、面白いですね貴方は」




月明かりに照らされる細身の身体が振り返る




少しだけ、ほんの一瞬だけその姿に見とれていたのは秘密だ




けれど、「貴方には無理ですよ」と小さく笑われ

俺のこめかみには簡単に青筋が立った






「ふざけんな!!
何だったら今直ぐにでもお前を――」



「ああそれから」



人の話を全く聞かない白い怪盗



思い出した様に、無駄に格好つけて指を鳴らす



それから珍しくにっこりと微笑んだかと思うと




「これからは私の事は
怪盗KIDとお呼び下さい」




私の大事な人がつけてくれたのでね、



とウインクを落とされた





かと思うと、残像のようにフッと長身が消えた。何てすばしっこい同級生だ。






(―――じゃなくて!!)




自分一人だけとなった暗い屋上で一人慌てる



”こんなだだっ広い空間で、またもや逃げられてしまった”




そんな、警察としての意地ではない





「…大事な人って…どいつなんだよおおお!!!!」






少なくとも自分ではない事実が解って


やるせない叫びと共に

コンクリートに拳を打ち付ける中森銀三だった






















「…で、最近”仕事”の方はどうなんだい?
怪盗キッドさん」



「ああ。中々面白い警部が居てね。
割と楽しめてるよ、優作」



「…相変わらず性格が悪いな、君は」

















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誰得な盗優←中

コナンのパパ’sが素敵すぎて血迷った

若い中森警部が見たい^ω^




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