「だぁーかーらぁ!
いつ戻してくれんだよ、紅子!」




自分の体長の3分2くらいある携帯に向かって
怪盗が叫んでいる



相手はもちろん
自身を縮めた赤魔術師と名乗る少女だ



あーだこーだ言ってるが
どうやら良い返事は貰えていないらしい





「……はぁ…」




ピッとパンチするように電源ボタンを押したキッドの顔も、
それを表している






「…ダメだったのか」



「ああ。なーんか満月の夜がどうのこうので、
3日後まで無理だってよ」




ブツクサ文句を垂れる怪盗が
机の上に腰を下ろす



叫び疲れたのか、
ペットボトルキャップにミルクティを注ぐと
音を立てて飲みはじめた






「…にしてもすげーな」





とんとんとシルクハットを上から叩く

「うぎゃ」とか「いてっ」とか言う怪盗が新鮮で可愛い







「…楽しんでるだろ、名探偵」



「あぁ、たりめーだろ?」




普段誰かさんに虐められる方なんだから

今くらい遊んだって罰は当たらないだろう




それに





「俺はお前が小さいままだと、身が安全だからな」




ズズッとコーヒーを啜りつつ
してやったり顔で見つめる





そう、コイツが小さい間は



いつものようにセクハラまがいに尻を触られる事も


耳にキスされる事も無いのだ



こんなに晴々した気分は他にない






「まぁ精々その満月の夜とやらを待つんだなー」





そう言って音程を外した鼻歌を歌いながら
流しへと向かう新一は

机の上の小さな怪盗の瞳が
黒くなっていた事には気づかなかった








(ぜってーギャフンと言わせてやる…!)







メラメラと闘志を燃やす怪盗は
小さすぎる手でガッツポーズをした



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