昔話をしようよ 花咲く野原 オレンジの 命が生まれたのは いったいいつだったんだろう この世界で 一番最初の どこで生まれて どこで朽ちたんだろう 昔話をしようよ ―――もう、 - 満たされた部屋 - シルヴィアは、目覚めると知らない部屋にいた。知らな天井、知らない間取り、知らない壁紙、知らない窓の外。ベッドに横たわったままくるりと辺りを見渡して、また首をかしげる。以前の記憶をいくらさらっても、ここに来た記憶はない。 「………オルソ…?」 確か意識を無くす前自分は熱を出して、側にはオルソがいたはずだ。そう思い、シルヴィアは彼を呼んだ。けれど彼の姿はどこにも見えなかった。部屋は温かく、お腹もすいていなかった。シルヴィアは考えようとするのだが、どうにも頭が働かない。仕方が無いと、もう少し眠ることにした。 時は少し 「…愚かな」 オルソは一言、村人に向かって言い放った。呟いた程度でも、人々は不思議と耳元で囁かれているようにはっきりと聞き取った。更に怯える人々を見て、オルソは続ける。 「この娘は、自らを差し出す事で、お前らを守っていたというのに」 松明の火が、勢い良く燃え上がった。村人は驚いて、手からそれが滑り落ちる。地面に落ちた松明は更に強く燃え続け、周りにいた人々はにわかに慌て始めた。 「この娘は貰って行く。その火は三日三晩、消えることはないだろう。自らの浅ましさを、身を以て知れ」 オルソは言い終わると、シルヴィアを抱えたまま空へ飛んだ。暗い闇にとけ込むように、その姿はすぐに見えなくなった。火は瞬く間に大きくなり、人々や家々を飲み込もうと猛威を振るう。逃げ惑う人々は、心底後悔しているのだろう。そうでなければ、こんな芝居をした意味がない。 オルソはシルヴィアを抱えたまま、村から少し離れた所にある森に降り立った。そして揺れぬようにゆっくりと、歪みの空間を歩いて行く。オルソはこの事を、彼女に言う気はなかった。シルヴィアは、きっとオルソのしたことを知れば彼を許しはしないだろう。けれどどうしても、シルヴィアの不名誉な噂をそのままにしておきたくはなかったのだ。シルヴィアは、悪魔に脅されていたのだ。悪魔の標的にされた村を、自らが生け贄になる事で救おうとしたのだ。そういう事にしておきたかった。優しいシルヴィアを、人々に思い出してもらえるように。 オルソはシルヴィアを自分のベッドに降ろすと、その髪の毛を一束掬った。 「……」 なんて言っていいのかわからなかった。一か八かの賭けに、オルソは勝利していた。それは、どのくらいの確率で起こることなのだろうか。 「……ありがとう」 オルソは一言呟くと、そっと彼女の髪に口づけした。 「オルソ、どうして駄目なの?」 「どうしてもだよシルヴィア。君は、もう僕の側を離れられない」 「だから、離れると言ってるんじゃないのよ。村に帰りたいの。少しでもいいわ。お願い、オルソ…」 「行ってどうするの? 君はあの村では嫌われていたじゃないか。行ったって嫌がられるだけだ」 「…オルソ…どうしちゃったの…」 シルヴィアは、オルソの様子が変わったことに戸惑っていた。気弱な悪魔だったオルソが、この悪魔の里に来てからはどこか 「オルソ、ねぇ、少しだけ…きゃぁ!?」 シルヴィアが必至に食い下がろうと、オルソの腕に手を乗せると、オルソはその手を取って自分の方に引き寄せた。そしてくるりと身体を回すとシルヴィアを持ち上げてベッドに放り投げる。何が起きているのか、シルヴィアには考える暇も無かった。オルソはシルヴィアの手を片手で封じると、もう片方で彼女の顎を掴んだ。 「―――んっ!」 そのまま荒々しくキスをされて、シルヴィアは彼の意図を知る。今まで、どれほど一緒にいても微塵も感じたことの無い空気。悪魔も人も関係ない、雄としてのオルソの姿だった。 「…どうして…離れようとするの」 「オルソ…っん、やめて…っ!」 「ねぇ。きっと、帰ったら、もう帰って来ないんだよ」 「…っん、やぁっ」 乱れた衣服の隙間から、オルソの長い指が彼女の肢体をなぞる。荒っぽい腕に比べて、指先は柔らかく、優しく、執拗だった。胸の頂きを弾くと、シルヴィアの身体は簡単に熱を持ち始めた。シルヴィアは、オルソの行動に驚いていた。こんな風に女を扱うなんて。捉えられたままの両手は、相変わらず自由にならない。脚の間にオルソの身体を挟むような体勢で、シルヴィアが自分を守る術など無かった。 「―――っん、やめ…オルソ…」 「離したくない。嫌ってもいいよ。僕は、一時だって離せない」 村は、殆どが焼けてしまっていた。シルヴィアが目覚める前に見に行った時には、村びとはどこかに非難していたらしいが、村は炭と化していた。そんな姿になったあの村の今を見て、シルヴィアがどういう行動を取るのか、オルソにはわかっていた。 このわき上がる、想いはいったいなんなのだろう。恋や愛だと言うなら、なぜこんなにも破壊的な気持ちになるのだろうか。 「愛じゃないよ…」 「…っえ…?」 胸をしごく手を、腹を伝って脚の間へと滑らせた。シルヴィアは、目に涙をためて懇願している。オルソは、自分は悪魔なのだと、この瞬間に思った。彼女の涙に、情欲はよけいかき立てられた。止めるように言う声は、恐怖で震えていた。見た事のない、オルソの雄の部分に対する恐怖と、感じた事の無い、わき起こる快感に対する恐怖で。 ―――こんなの、愛なんかじゃない。 こんなに怯えさせて、成り立つ愛があるわけがない。オルソは自分に言い聞かせて、またその感情の名前を探し始める。 「…っいやぁっ! オルソ、…っも、やめて…っ!」 充血した突起は、指がそれにあたる度に彼女の奥をうずかせた。溢れる密液を指に絡ませて、そのまま奥へと挿入する。 「―――っ!」 涙が、落ちるのを見た。オルソはそれを綺麗だと思った。彼女は、中をかき回される異物感に、ぽろぽろと泣いてみせる。口を引き締めて、声を出さないよう、必至に鼻で息をする。オルソは指を引き抜いて自分のものを取り出すと、そのまま彼女の秘孔にあてがった。 「……っい…っ」 痛い、と、その一言すら言えないようだった。ぎちぎちと中を押し進むと、全てが入った所でその動きを止めた。そして彼女の息が落ち着くのを、少しだけ待つ事にする。 「…全部、僕のものだ…」 「………さい、てい…だよ…。こんな…」 震える声さえ、可愛いと思う。病的に、彼女を独占したい。柔らかく微笑む彼女が好きだった。彼女の笑顔を見ると、心が安らいだ。けれど、その彼女が泣いていても、どうしてか嬉しかった。胸の上に散った、いくつもの赤い花は、彼が今しがたつけたもの。太ももを伝う赤い血も、彼女の破瓜の証。彼に貫かれた証。涙に濡れたその瞳は、はっとする程綺麗な蒼だった。ブロンドの髪は乱れ、汗で身体に張り付いている。何もかも、官能的で美しい。愛情ではない。それは、劣情だった。 「どう思ってもいいから…」 「…っ」 「だから、どこにも行かないで…」 呟くと、オルソは腰をゆっくりと揺すり始めた。打ち付ける度に、小さく悲鳴を上げる。束ねていた手を解放すると、その手は力なくうなだれた。抵抗する気は、もうないのだろう。オルソはシルヴィアの唇に自分のそれを這わせた。薄く色づく唇に舌を入れ、丹念にかき回す。中に引っ込んだシルヴィアの舌を探り当てると、優しく吸い付いた。何もかも、温かいシルヴィアの身体。それをきゅ、と抱きしめて、その劣情を吐き出した。 † BACK INDEX NEXT † |