「―――は…っはぁ…っ」



 ユキノを攫って来たはいいが、契約通り、ユキノを抱く事ができるのだろうか。ユキノの身体はもう既に病に犯されてかなり弱っている。カレルはユキノを悪魔の里へ連れていこうとしたが、ユキノの様子がおかしかったので途中の山小屋に入り、そこに寒くないよう結界を張った。脈が早く、熱が高い。ユキノの身体を襲う病は、ユキノをもうすぐ連れて逝こうとしているようだった。



「……ユキノ」



 カレルが呼ぶと、ユキノはうっすらと目を開けた。辛そうな顔で、額には脂汗をかき、口で息をしている。もうすぐなのだろう。魂も今やはっきりと見て取ることが出来る程だ。そんなユキノを、カレルは観察しながら口を開いた。



「まさか、契約破るつもり?」

「……カレ…ル…私、…大丈夫…だから…」



 契約を破るつもりは、ユキノにだってない。もう幾ばくもない命でも、カレルが満足できなくても、ユキノには、契約を破るつもりはさらさらなかった。カレルはユキノの小さな声を聞き取って、満足そうに微笑む。



「一回で、終わらすつもりないかんな」



 カレルは毛布を床に沢山ひいて、背中が痛くないようにスペースを作った。ユキノをその上に移動させ、着せていたシャツを脱がす。キスは、いつものように激しくはしなかった。触れるように、ついばむように、優しく唇を重ねる。ユキノは不思議だった。まるで壊れ物を扱う時のように、カレルの指は優しい。自分はカレルに何をされても構わないのに。



「…ユキノ、これ、殴られたのか」

「……え…?」

「口ん中も切れてんな」



 ラフに叩かれた時、口の中も切ってしまったのだろう。夢中で気づかなかったが、そう言われれば血の味がする。あの時は絶望でわからなかったが、今はカレルが頬に手をやっている所がじんじんと痛んだ。



「…あ…っや…」



 口づけをそのままに、カレルの手がユキノの肌を伝う。小さな膨らみを揉みしだく手はゆっくりと円を描くようにその形を歪ませていた。元々熱かったユキノの身体は、更に熱を持っていた。カレルの冷たい手が触れる度、ユキノの身体が小さく跳ねる。



「ん…はぁ…」



 興奮している身体は、自分でも驚く程に敏感になっていた。カレルの指が胸の先端を弾くと、背筋にぞくぞくと電流が流れるような感覚が走った。カレルは息一つ乱さず、ユキノの事を観察している。いつものあの、不遜な表情。けれど左右色違いのビー玉のように美しい瞳に、自分が映っているのかと思うと、ユキノは身体の奥がジンとするように感じた。



「や…待って…」



 カレルの手は、いつの間にかユキノの太ももを這っていた。細い脚を撫でる手つきがとても淫らに感じる。ユキノは思わず、カレルの手を拒んでしまった。少し身体をよじっただけだが、ユキノははっとしてカレルを見た。カレルはそんなユキノを見て、ふっと笑う。



「怖い?」

「……ち、ちがう…」

「別に怒んないって」



 ラフに思い切り叩かれた事で、ユキノは無意識に恐怖を抱いているのだろう。頭の中の考えに、身体はついていっていないようだった。カレルはユキノの脚に手を置いたまま、キスをした。もう、ユキノの性感帯はわかっている。口内に舌を入れ、ゆっくりとかき回した。そのうち、固くなっていたユキノの身体の力が抜けた。それを確認してから、また手を動かし始める。



「ん…ぁ、ん…」



 まだ幼いユキノの身体。けれど女であると主張して仕方が無い。山小屋には、ユキノが放つ甘い女の匂いが満ちていた。この匂いに当てられた小鬼達が、きっと小屋の周りに集まってきているだろう。カレルの結界で中に入ることは出来ないが、発情した奴らは少々厄介だ。カレルはくすりと笑いながら、またユキノの舌を舐める。



「下着、脱ごっか」



 ユキノのショーツを脱がせると、愛液がとろりと溢れて来ているのが見えた。ユキノは羞恥に全身赤く染めて顔を腕で隠してしまった。カレルはその腕を開いて、包むものが何もないユキノの身体を上から下までゆっくりと見る。



「…かれ…る……も…恥ずかし…から…」



 呼吸をするのも、今のユキノにとっては大変な事だろう。極限の中で、それでも裸を見られる事を拒もうと腕に力を入れる。



「はは。なんか、あんた可愛いね」



 心臓にキスをすると、ユキノの魂はぶると震えた。輝くように光放つ、美しい魂。この身体同様、カレルの好きなようにしていいものだ。



「ん…。やぁ…待って…」



 脚を触っていた指は、ユキノの花弁に辿り着いた。溢れる愛液を絡み付けて、敏感な所をこすり続ける。ユキノの身体は、面白い程よく反応した。



「ん…っん…」

「指、入れるよ」

「…っん…」



 ゆっくりと、長く細い指が中へと入っていく。



「あったか…」



 冷たい指に絡み付くユキノの内壁は、思った以上に温かかった。カレルの指を飲み込むユキノはそれだけで辛そうに眉をしかめたが、抵抗する元気は無いのだろう。



「ん…あ…っんぁ…っ」



 喘ぐ事さえ、苦し気に聞こえる。時間は、あまりないのかもしれない。カレルはそう判断すると、動かすスピードをあげた。時間をかけてほぐそうと思っていたけれど、ソノ前にユキノに死なれては楽しみが半減だ。



「ユキノ…も、いい?」

「……ん…」



 ユキノの目には、もう涙が溜っていた。熱に浮かされた潤んだ瞳に、カレルの二つの光が映る。先端を当てると、ユキノはびくりと硬直した。キスを繰り返して、さっきのように力を抜かせると、カレルは徐々にその身体を進める。



「ん…痛…っや、も…」

「我慢」



 逃げようと身体を捩るユキノを、カレルは軽く抑えた。狭いユキノの中。食いちぎられそうな程締め付けて、それは拒んでいるようでもあるが、離すまいとしているようでもあった。



「…ユキノ、息を止めるな」

「…っは…っんぁ…っ」



 痛みに耐えようと、息を止めてしまいそうになるユキノを、カレルはたしなめた。



「うわ…良いね。ユキノ? 感じてる? 俺のこと」

「……はぁ…っぁ、うん…っ」



 小さな身体をゆっくりと揺らしながら、カレルは快感に酔った。ユキノの身体を気遣いながらも、止めることはしない。ユキノの運が良ければ、まだ望みはあるかもしれないからだ。



「ユキノ…悪魔の子供、産む気ある? ま、確率は低いんだけど」

「……ん……?」



 もう、彼女は音も聞こえていないのだろうか。ユキノはうっすらと開けた瞳で、カレルに問いかけた。



「…まぁ、それもコレが成功したらでいいか」



 ユキノの身体は、きっともう限界だ。カレルが揺り動かすことで、更に消耗している事は間違いない。けれど、カレルは確信していた。きっと、ユキノなら。胎児の時、悪魔の力を味方に付けた彼女ならば、この試みも成功するだろう。



「ね、いい…?」

「…っん…っぁ、あぁ…っ」



 カレルが放つ液体は、ユキノの中に溢れ出した。カレルがユキノの中から出ると、半透明で白っぽい液体が糸を引いた。気を失ってしまったユキノを支えて、カレルは彼女を観察する。



「……言ったよね。一回で終わらすつもり無いって」



 心臓は弱々しく脈を打っていた。もう動く事に疲れたというように、ゆっくりとその鼓動を響かせる。良く音を拾うカレルの耳に、その音は彼女の最期を主張する。



「ユキノ」



 カレルは少し強く、彼女の名前を呼んだ。声に応じて、ユキノの眉がぴくりと動く。何秒か、何分か、何時間か。カレルは弱くなっていくユキノの心音を聞いていた。けれどある時から、その音が段々と力強くなってきていた。



「そうそう。あんたは出来るよ」



 悪魔の血を命の水に変える力は、キアラではなく、ユキノこそが持っていた。だからこそ、ユキノを産むと同時にキアラは死んだのだ。







「…ほら。ね」



 カレルがそう呟くと、ユキノがゆっくりと目を覚ました。 







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