あれ?
いつものように帰宅すれば、朝出掛けた時のような散らかった部屋ではないことに気付く。
「あ、」
見慣れた鞄の存在に、慌てて部屋の奥に進めば徐々にいい匂いがしてきた。
「友恵ちゃん!?」
「お帰り、虎徹くん」
「お、おお、ただいま…じゃなくて!」
だって入院してたはずじゃ、と聞く前に答えが返ってきた。
「1日だけなら平気よ」
「そういうのは予め言ってくれよぉ」
「忙しいのに迷惑掛けられないわ」
「だからって、掃除なんかしなくても…それにほら、楓んとこ行けば良かっただろ?」
「また病院に戻る時、辛くなるのは楓ちゃんよ」
「そうだけど…」
「そんなにこの部屋、見られたくなかった?」
「まあ…」
シンクに溜まった食器やゴミ、散らかった衣服、飲んでそのままの酒は全て綺麗に片付いていた。
「虎徹くんが私や楓ちゃんの心配をするように、私だってあなたが心配なのよ」
「すまん…」
「ご飯、まだでしょ?」
「あ、ああ」
「ちゃんと栄養摂ってね」
「おう」
久しぶりに食べる友恵の手料理はいつも食べてる出来合いの物とは比べ物にならないくらいウマくて、虎徹くんは相変わらずスゴく美味しそうに食べるね、作って良かったと笑った友恵に少しだけ視界が歪んだ。
これが最後の手料理だった
2012/11/22
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