「ラン!レン!ちょっと待って!」
早めの昼食をとって休憩もそこそこに、太陽がジリジリと最高気温を叩き出していく中、そんなもの関係ないとばかりにバタバタと玄関を飛び出して行く弟と妹に制止の声は届かず、兄である真琴も慌てて庭に出る。
しかし既にそこに二人の姿は無く、急いで階段の方に出てみれば足音がして安堵する。
まったく、と溜め息をついたところで目に入った二人は階段を数段上に上がったところにいた。てっきり階段を駆け降りていったのだと思っていたから裏切られた。
「あ!ハルちゃん!」
グリコでもしようとしたのかと思えば蘭がそう言って遙の家へと駆けていった。それに続く蓮を見て真琴も同じように後を追った。

二人と対面する遙はどうやら洗濯物を干していたところらしく、洗濯かごを持ったまま後から来た真琴の方を見た。
「おはよう、ハル」
遙の視線が真琴の目から少しズレて、恐らく荷物を捕えていた。出掛けるのかという目だ。
「どこか行くのか?」
「プールだよ」
「プール…」
遙の目が変わった。しかし生憎真琴達が行くのは普段自分達が泳いでいるような長方形のプールなどではない。
「ね、ハルちゃんもいっしょに行こ?」
「ああ、ダメだよ、ラン」
「なんで?」
「ダメなの?僕もハルちゃんと泳ぎたいのに」
「ああ、えっと…ハルは、ああいうプール好きじゃないから…」
純粋に遙と遊びたいと思っていた蘭と蓮は落胆し、それを見た真琴も理由は違えど二人と同じように表情を暗くした。
「分かった。行く」
「ええっ!?」
「「やったぁ!」」
喜ぶ二人を余所に真琴は驚いていた。
「いいの?あそこきっとあんまり泳げないよ?」
目的のプールは流れるプールやウォータースライダーがメインだったと真琴は記憶している。小さい頃に行ったっきりであまり覚えていないが、普通の25メートルプールや温水プールなどもあった気はするがまともに泳げたことはなかったはずだ。
「お前一人じゃ面倒見きれないだろ」
「いや、まあ…そうだけど…」
「俺が行ったら迷惑か?」
「そ、そんなわけないだろ!」
「じゃあ決まりだな。待ってろ。準備してくる」
そう言って遙は洗濯かごを持って部屋の奥へと消えていった。
遙は妹弟の面倒を見てくれると言っていたが案外自分が楽しみたいのかもしれない。

(ハルの面倒まで見ることになったらどうしよう、なんて)

真琴は思わずクスクスと笑ってしまった。最近はあまり無かったが水にテンションが上がった遙はなかなかに面倒くさいのだ。
「どうしたの?お兄ちゃん」
「ううん、なんでもないよ。楽しみだね」
「うん!」



スイマーは今日も青を見る

2014/06/30



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