「おっはよー!アーンド、ハッピーバースデー!アイアイ!」
「レイジ、うるさい」
事務所の一室で台本チェックをしていたところだった。ノックが3回響いて返事をする間もなくドアが勢い良く開いた。レイジのドアの開け方からして中に僕がいることは分かっていたのだろう。
「はいこれ、プレゼント」
早速、とレイジから手渡されたのは縦9センチ、横7センチの青い箱だった。開けて開けてと急かされて蓋を持ち上げればそこには白と青を基調とした土台に、透明なドーム型のガラスの容器がくっついているものがあった。そのガラスの中には634メートルのタワーを縮小した模型が入っている。
「何これ」
「あれ?アイアイご存知ない?スノードームだよっ」
「スノードーム…」
そういえば前に雪について調べた時にそんな言葉を見掛けた気がする。再度検索をするべきか。
「こうやってちょっとひっくり返してから元に戻すと…」
レイジの手の平に乗せられたスノードームはガラス部分いっぱいに白いものがふわふわと漂っていた。
「この前雪降った時アイアイ嬉しそうだったから毎日雪見せてあげたいなって思って。どう?きれいでしょ?」
「…確かにきれいかもしれないけど所詮は偽物でしょ」
「うーん…そうだけどさ、作り物には作り物にしかない美しさってあると思うんだよね。アイアイみたいに」
ぱちっとウインクを決めるレイジから目を逸らしてスノードームに目をやった。
「…一言多いよ」
「え?なになになんて言ったの?れいちゃんありがとうって?」
レイジに聞こえないくらい小さな声で呟いたそれをレイジは都合よく解釈していたがまあ感謝していなくもないから間違いは指摘しなくてもいいだろう。
「まあそういうことにしとくよ」
「もーアイアイは素直じゃないんだからー!」
そう言いながらレイジは僕の頭に手を伸ばした。しまった。余計面倒くさくなった。
「レイジそれやめて」
「ええースキンシップなんだからいいでしょー」
「髪型崩れるんだけど」
「まあまあ。後で直してあげるから!」
「やめてくれれば解決するんだけど」
鬱陶しさに眉根を寄せれば今度は眉間を押される事が分かっているからそうしないように無表情を決め込む。相手にしなければレイジだって飽きる。
レイジに構う事無く再び台本を開けば視界の端、机の上に置かれたスノードームの中の雪が未だに揺らめいているのが見えて一瞬目を奪われてしまったけれどすぐに台本に意識を戻した。



スノードーム・ドリーム

2014/03/01



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