こういう行事の時男子校というのは楽でいい。
と、思っていたのだが。
「凛先輩」
やたら慕ってくる面倒な後輩が一人いた。
「良かったらこれ食べてください!」
差し出されたそれはどう見ても手作りで、半透明のラッピングの奥に目を凝らせばすぐにそれが茶色い事が分かる。
「俺は、」
甘いもの苦手だし、どうせなら誰か他にそういうのが好物な奴に渡せばいいだろ。言い掛けてやめた。言ったところで似鳥はその通りにならないだろうしそれに指先の絆創膏が見えてしまったら受け取らないわけにはいかないだろう。
「どうしたんですか?」
「なんでもねえよ」
なかなか受け取らないからか不安そうな表情を浮かべていた似鳥の手からそれを受け取って袋を留めていた飾りを取る。
開けた途端に甘い匂いがして少し躊躇いながらそれを一つ摘んで口に運べば口内の温度で表面が少し溶けた。それを機に歯を立てれば柔らかく崩れてねっとりと絡みつく甘さに耐えきれなくなって鼻呼吸をしないようにして飲み込んだ。
何を入れたのか知らないが普通のチョコの味とは少し違いカカオの苦味ではない何か他の苦味があったように思う。
俺が飲み込んだのを見て似鳥は嬉しそうに笑っていたがとても二つ目は食べられそうにない。
一先ず適当に誤魔化してこの部屋から出なければ、と言葉を探す。
「残りは後で食うから」
どこかに置いておけという意味を込めてそれを似鳥に渡して何か言われる前にと大股気味に部屋を出た。




恋、濃い、故意
(指を切ったのはわざと)

2014/2/14



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