平和島静雄はとあるマンションの入口にいた。
新宿の高級マンション。
住民の許可が無ければマンションの内部にすら入れないシステムで警備されている。
静雄は新羅から別の用件で電話を受けていたのだがそういえば今日は臨也の誕生日だったっけと新羅が告げた事に少しイラッとしたのがきっかけでケーキを片手に今ここにいる。
最初は顔面に叩きつけるつもりだった。
しかし食べ物を、ましてやホールケーキを粗末にするわけにもいかずそれは思い止まった。
足元に置いておく案と窓に投げつける案もまた然り。
かといって本人に直接差し出すのはさすがに気が引けた。
そもそも何故あんなヤツの誕生日を祝う必要があるんだと今更ながら思った。
憂さ晴らしだとしてもここまでする必要は無かったはずだ。
もうこのまま持ち帰って自分が食べてしまえばいい。そうだ。それがいい。
だがその案までも打ち砕かれる事になる。
「あっれー?何してんの?」
最悪だ。
マンションの入口から現れた臨也にやはり来るんじゃなかったと静雄は後悔するよりも前にケーキを投げつけた。
箱から出す余裕は無かった為そのケーキをキャッチした臨也が箱を開ければ中で崩れたケーキが広がった。
「これはまたシズちゃんらしい豪快なケーキだね」
臨也は指で掬い上げた生クリームをそのまま口に運んだ。その様子が静雄の怒りを更に買う事になり臨也のもとへ物が飛んでくる事になる。
それを笑顔で躱す臨也がいつもより上機嫌な事を知らないまま静雄はガードレールに手を掛けた。
いつも通りの非日常
2013/05/04
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