業務が終わったのは日が変わる少し前だった。

「それでは、明日」
「おー…明日?」
いつもならそんなこと言わないんじゃないかと違和感を覚えた。明日何かあっただろうか。

「どうかしました?」
「明日なんかあったっけ?」
「覚えてないんですか?」
「えーっと…?いや、うーん…」
「覚えていないんですね」
「楓と約束したのは覚えてんだけどなぁー」
「それ、いつの話です?」
「3日前?」
「5日前のことは覚えていないんですね」
「だから何の話だよ」
「僕と約束していたのを忘れたんですか?」
正直そんなことはちっとも覚えていなかった。
いったい自分はいつどんな約束をしたというのだろうか。
重大な約束ならばここで思い出さなければ相手を傷つけることになる。

「…あ!そういやぁそうだったかも!わりわり!で、明日なんだって?」
「約束の内容覚えてないんじゃないですか」
図星である。

「…娘さんとの約束があるんでしょう?」
「へ?…いや、でもバニーの方が先約だったんだろ?」
「いいんです。それより娘さんと一緒にいてあげてください」
「いいのか?」
「親がそばにいなくて寂しい気持ちは分かりますから」
「…そうか」
「ですから僕に構わず明日は娘さんのところへ行ってください」
「…すまねえな。埋め合わせは今度するから」
「そうですね、僕と約束したのを忘れて娘さんと約束を取り付けてくる虎徹さんが悪いんですから、次は何が何でも僕の言うとおりにしてもらいますからね」
そう言ったバニーは妖しく笑みを浮かべてその場を去って行った。



…嫌な予感

2012/09/20



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