二階は二年生の教室がある。つまり弟がいるからほぼ確実にお菓子が手に入る。というわけでまずはA組を覗いてみることにする。

…えーっと、弟は…あれ。いない。どこ行きやがったあのやろう。

「ほらこれ。蓮と蘭がこの格好で朝起こしに来てさ、お菓子ちょうだいって言われるかと思ったら逆で。“トリックオアトリートって言って”って言われてさ」
教室の後ろ側、一番奥で楽しそうに話す彼と聞いているのかいないのかよく分からない彼は見覚えがあった。確か水泳部の部長と副部長。副部長には一つ噂があるのだが私は全く信じていない。露出狂だという噂だ。
「それで朝これ貰ったんだ」
部長の大きな手のひらには小さなお菓子が二つ乗っかっていた。
「……と、」
え?何?副部長声ちっさ!部長笑ってるし意味分かんない。
「…笑うな」
「ごめんごめん。ハルが言うとは思わなかったから。えーっと…はい、どうぞ」
部長のもう片方の手はスクバを漁った後、副部長に差し出された。ああ、なるほど。副部長見た目通り大人しい性格なのか。
「真琴」
「ん?」
「からかうな」
「ちょっとどんな反応するか見たくって」
そう言って部長はポケットから新たにお菓子を取り出して副部長に渡した。
よく見たら最初に出されたお菓子はお菓子ではなくてスルメだった。部長はおちゃめなのかサディストなのか。それよりスルメ持ってるってなんなの。
「じゃあ俺も。トリックオアトリート?」
まあ、そうだよな。ギブアンドテイクだよな。
副部長なんか躊躇ってるように見えるけどなんだどうした。あ、さっきのお菓子差し出した。
「これしかない」
「ダメ。それは反則」
部長はそう言いながら副部長の手にあったお菓子の包みを破ってそのまま副部長の口元に持っていった。
「食べて?」
「……」
副部長は部長に圧されて口を開けた。なんか悔しそうだ。
「お返しは帰りにして貰うね」

やっぱりなんか部長腹黒いっていうかなんか裏の顔あると思うわ。うん。





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