隣に並んでいた凛が一歩二歩と先に進んで振り返る。
じゃあな、と手を振る凛を見送るようにただ見つめていれば凛はやがて前を向いて歩き出す。
凛のランドセルと髪が夕陽をきらきらと反射させていて水面のようだと手を伸ばすけれどそれを掴む事は出来ずに終わる。
凛の姿が見えなくなった途端、その場に取り残されたような置いていかれたような感覚が身体中を支配していく、そんな錯覚に陥るその瞬間が、嫌いだった。





「ハル」
それは夢だ、早く目を覚ませと現実の自分が意識を覚醒させるべく目蓋を開けた。
何度も名前を呼ぶ真琴と見慣れた部室の一角を見て寝ていた事に気付く。
「遙先輩」
真琴と目があった瞬間、右側から同じように江が名前を呼んだ。その声音はどこか困惑しているようなものだった。
「ほらハル、いい加減放してあげたら?」
何のことかと真琴の視線を辿ればその先には自分の右手があって、その手は何故か江の髪を掴んでいて慌てて手を開いた。
「悪い」
するりと手のひらからすり抜けていったその髪が外からの光を受けてきらきらと反射していたのを見て思い出すのは同じ色をしたあの髪だった。
「どうしたの?ハル」
何かあった?変な夢でも見たの?と心配する真琴に別に、と返して部室から出る。
ハル?と真琴の声を聞きながらそのままプールの方へ向かってプールサイドで服を脱ぎ捨てれば、まだ泳ぐの、と制止の声が掛かった。
それを無視して飛び込み台に立てばきらきらと揺れる水が眩しくてそれに溶け込むように飛び込んだ。




煌めく景色

2013/09/12



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