今日も今日とて夏期講習である。お盆だろうが関係ない。
相変わらずの教室で相変わらずさっぱり分からない数学と戦って…いや、戦うすべが分からないから戦ってはいない。攻撃道具であるシャーペンは全く役たたずでくるくると指の上で回っている。シャーペン仕事しろ。

「よし、終わった」
「え、ちょ…はや!」
遥はあっという間に問題を解き終え焦る私を差し置いて教室から出ていった。
いつもは私の勉強を覗いては教えてくれるのだが今日は見向きもしなかった。進歩しない私は呆れられてしまったのだろうか。
先生も今はいないため教室に一人取り残された私のするべきことは睡眠だった。
取り敢えず一問は解いておこうと問題に目を向けるとa線がなんたらb線がなんたらと書いてあったので答えの欄に分かりま線と書いてシャーペンを手放した。丸腰状態であり、お手上げ状態である。



どれくらいウトウトしていただろうか。数分かもしれないし数時間かもしれない。ガララ、とドアの開く音がして目が覚めた。

「貴音ー」
やってきたのは先生ではなく遥だった。何、と言い掛けたところで遥はあろうことか私の背中に缶ジュースを突っ込んできた。
「ぎゃああ!つっめた!何すんの!?」
「夏は人の背中に冷たいものを入れるって先生に聞いたからやってみたんだけど…」
「冷たいものならなんでもいいってわけじゃないと思うけど?」
「じゃあ何?」
「普通は氷でしょ」
「そっか。でも今日は氷無いからそれで我慢して?」
首から入って腰のあたりから出ていった缶ジュースを遥は机のプリントの上に転がした。プリントが濡れてしまったが私のせいではない。
「これあげるから早く終わらせよ?」
ジュースを手に入れたところで問題が解けるようになるわけがない。が、せっかくわざわざ遥が買ってきてくれたのだ、飲むに決まっている。缶を握ってプルタブに爪を掛けるがそれは遥の手によって遮られた。
「とりあえず3問出来たらあげるから」
別にジュースをお預けされたくらいどうってことないのだが、大人しく遥の説明を聞くことにした。見捨てるどころか差し入れをしてくれた遥に免じてだ。
その後問題が進むたびぶっきらぼうかつ高圧的に、これ何?と私が質問を投げ掛けては遥が一生懸命に説明をしてそれを私は必死に理解しようと頭を回すという流れを繰り返すのだった。




ご褒美のジュースはさぞ美味かろう

2013/08/15



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