我輩は猫である。名前はまだない。
これ一度言ってみたかったんだよね!名前はある。それも複数。
三毛猫でもないのにミケと呼ばれたり毛の色からシロと呼ばれたり他にも色々。
わたしは毎朝決まった時間に決まった場所に行く。わたしだけじゃなくて他の猫も大体そんな感じだけど。
焼き魚の美味しそうな匂いのする家の近くにある階段に座るとそれに気付いた近所の人がエサをくれる。それを食べ終わった頃にその人は来る。名前はマコトっていうらしい。
おはようと一撫でしてマコトは階段を登っていく。そして暫く経つとマコトは階段を降りてきてまたわたしに近付く。
毎回美味しそうな焼き魚の匂いを漂わせてくるのに魚はくれない。
暫く撫でられているともう一人、焼き魚の匂いを纏った人が階段を降りてくる。

「遅いよ、ハル」

ハルと呼ばれる人はこの時間にわたしに構ってくれたことはない。他の時間、誰か他の人間がいない時は構ってくれるのに。それに比べてマコトは会うたびいっつも構ってくれる。まあエサはごくたまにしかくれないけど。

「これ」

「サバ?もしかしてコイツに?」

なんと!ハルが、焼き魚を持っていた!通りでいつもより匂いが強いと思った!

「…真琴のせいで落としたやつだ」

「あ…あれね…ごめんごめん」

何の事かは分からないがハルが地面に置いてくれたそれを前にすればどうでも良かった。一応感謝しなきゃとハルに向かってにゃあと鳴いたがハルは顔を逸らしていて気付いていないようだったから遠慮なく魚に噛りついた。

「サバ焼いてる時は俺に触るな」

「だからごめんって」

先に階段を降りていったハルは機嫌が悪そうで、それはどうやらマコトが原因らしかった。理由は知らないけれど。
マコトはわたしが思っているよりずっといじわるなのかも、と思いながらその後ろ姿が消えるのを見届けて再び魚に噛りついた。




わたしの朝はこうして過ぎていく

2013/07/29



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