昼食は屋上かプールサイドで食べる事が多くなった。
みんなで一緒に食べようと約束をしたわけではなくなんとなくそうなっていた。
真琴と遙が教室で食べていれば渚が怜を連れて来て屋上に行こうと持ち掛けた事から次第にそうして集まって食べることになっていった。
幸い今まで雨が降ったことはないため今日もそうして屋上の青空の下で弁当を広げることになった。

真琴と遙が弁当を広げ律儀にいただきますと手を合わせたところで渚と怜が来た。

「4時間目体育だったから遅くなっちゃったー!」

重たい扉がバタンと閉まり渚が此方に駆け寄ってくる。渚はそのまま遙と真琴に向き合うように座り込み二人がどれくらい弁当を食べ進めているか確認した。

「わあ!まこちゃんのお弁当かわいい!」

真琴の弁当は普段のような落ち着いた色ではなく色みのあるものばかりだった。弁当を覗き込む渚は目を輝かせていて、それを余所に怜は隣に腰を降ろした。

「弟と妹が遠足でさ」

「まこちゃんのお母さん昔から器用だもんねぇ」

これとかすっごい細かいよね!とウズラの卵にデコレーションされたキャラクターを指差した。

「欲しい?」

「え、くれるの?」

「うん」

「あー…でもこれだけ凝ってるんだからこれはまこちゃんが食べるべきだよ!」

普段は元気さが有り余る行動や強引さが目立っているが渚はよく人を見ているし気遣いが出来る。

「だから代わりにこれちょうだい?」

渚はそう言いながら真琴の隣に置いてあった紙パックのお茶を手に取った。

「いいけど…全部飲むなよ?」

「ありがとまこちゃん!」

渚はお茶を飲みながらついでにこれもちょうだい?と側にあったゼリーにも手を出した。真琴は面倒見がいいからこういうのは大好物でない限り断らないという事を渚は知っていたからだ。

「これは…」

断らないと思っていたのだが違ったらしい。

「ダメなの?」

「いや、渚にはこっちの方がいいかと思ってさ」

そう言って真琴は保冷剤の入っているバッグの中からチョコレートを取り出した。

「もしかしてボクのために?ありがとまこちゃん!」

渚はチョコを持った真琴の手を取ってそのままぶんぶんと縦に振った。

「弟が遠足に持っていくつもりだったヤツなんだけどさ」

すぐに溶けてドロドロになってしまうという事をすっかり忘れて買ってしまったらしい。普段何かと真琴の分の夕飯を分けて貰っている蓮はお礼にとそれを真琴にくれたのだ。

「じゃあこれはレンくんのチョイス?」

「うん」

「レンくんとは気が合いそうだ」

そう言って渚はチョコの包装を剥がした。

「これ最近のお気に入りなんだー!」

「おいしいの?」

「食べてみたら?」

渚はそう言うと一口サイズのそのチョコを前歯で咥えた。かと思えばカリッとそのチョコを真っ二つに割った。

「はい、まこちゃんの分」

「いや今弁当食べてるんだけど」

「でも今口の中空っぽでしょ?」

「そうだけど…」

チョコを食べた後に食べる弁当の味を考えると今チョコを食べるのは控えたかった。

「じゃあいいでしょ?はい、あーん!」

口の前にチョコを差し出す渚の強引さに真琴は渋々口を開けた。
飛び込んできたチョコを口内の熱で溶かすようにして味わえば何とも表現しにくい味が口いっぱいに広がった。

「どう?」

「微妙、かな…」

「珍しい味だから好みも分かれるのが当然だよ」

そう言って渚は真琴にお茶を渡した。真琴はそれを少し飲んでから弁当に手をつけたがやはりまだチョコの甘い味がして少し顔を顰めた。




遠足の味

2013/07/23



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