遙が朝食を食べ終わるのを待つ真琴は昨日の話を思い出した。
生まれ変わるなら何になりたい?なんてよくある話題でクラスメイトが盛り上がっていたことだ。
「ハルはやっぱり生まれ変わったら魚になりたい?」
「…別に。なりたいと思ったところでなれるわけじゃないだろ」
「そうだけどさ」
もしもの話は素直に思った事を言うものなんじゃないのかと真琴は考えながらテレビの端の時計を見た。今日はいつもより少し早い。
「こうやって誰かに食べられるのは嫌だ」
「え?」
「だから魚にはなりたくない」
そう言って遙は残り一切れの鯖を口に運びもぐもぐと咀嚼しながらごちそうさまと手を合わせた。
その鯖は無我夢中に泳いだ先で網に引っ掛けられ、市場に出されてこうして今遙に食べられたのだ。そうなりたくないのだと言いながらも遙はそれを食べた。
「じゃあ水族館の魚ならどう?」
台所で水を流す遙の背中に向かって真琴がそう言えば遙は少し考えたのか間があってから水を止めた。
「閉じ込められて一生同じ景色しか見れないのは嫌だ」
「そう。じゃあやっぱり人間だね」
制服や鞄を取りに部屋へ行く遙を余所に真琴は台所に放置された食器とスポンジに手を掛けた。
「…人間だって食べられちゃうんだけどなあ」
その呟きは勿論遙には届いていなかった。
結局のところ
2013/07/23
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