これだからあの男は。

鳴り響くチャイムに、ネットで注文してた物が届いたのかと思い玄関を開ければどうやらそれは違ったらしく、そしてそれは間違いなくボッスンからの郵便物だった。
何か送ってくるならそう一言メールでもしてくれと思いながら玄関に座り込んでそれを開けてみれば中には更に箱があって、なんだと持ち上げれば手紙らしきものがあった。

『ヒメコに渡してくれ』

ちょっと待て。俺に何かあってついでにヒメコにもっていうことなら分かるがヒメコ宛ての物しか入っていないのに俺の家に送るのはおかしいじゃないか。お土産の一つや二つ入れてくれればいいものを。

『お前今なんで俺宛てなんだと思っただろうけど去年のリベンジだからお前にも協力して貰わないとって思ってさ』

リベンジ。それはもうこれを見た瞬間からなんとなく気付いていたことだ。

『ヒメコの誕生日、サプライズでこれを渡してくれ』

一年前の今日に行ったサプライズは失敗に終わった。それをまた同じようにとはいかないがサプライズで祝いたかったのだろう。
ボッスンからの唐突の郵便というのは俺だってびっくりしたのだからヒメコだって驚くに違いない。
あとは中身の問題だったりするのだがそこは確認のしようがないためヒメコが喜ぶか怒るかは俺にも予想がつかない。
とりあえず一度ヒメコに連絡を入れて家にいるかどうか確かめなければならないため部屋に戻ろうと立ち上がればちょうど玄関のドアの向こうでチャイムが押された。今度こそ俺への郵便だろう。
先程のことがあったため鍵は開けっ放しだった。
サンダルを引っ掛けてドアを押せばそこには配達員が…いなかった。

「よう」

その代わりに先程の郵便物の送り主がいて本当にこの男は唐突だなと思った。

「これもサプライズか?」

「最初は来る予定無かったんだけどな」

去年の事をライアンに話したらじゃあ行ってみたらと言われたこと、ちょうど色々取りに来たかった物があったこともあり急遽戻ってきたらしい。

「ヒメコ家居るって?」

「今電話しようと思ってたとこだ」

「居なかったらどうする?その前に電話繋がらなかったらもうこれ完全に失敗だよな…?」

「途端にネガティブだな」

電話が繋がらなかったらヒメコの家の前で待機するなりすればいいだろうと思いながらとりあえずボッスンを玄関に待たせ部屋にケータイを取りに行って、階段を降りながら発信すれば3コールでヒメコに繋がった。出ないどころか凄く早いじゃないか。

『もしもしスイッチー?久しぶりやなあ!どしたん?』

「今家か?」

『家やけど?』

「そうか。では暫く家に居てくれ」

『は?』

「じゃあ」

『え、ちょ!』

理由を訊かれる前に素早く通話を終わらせた。わけが分からないと電話が掛かってくるかもしれないがそれはまあ出たら吐かされることは確実だ。

「家にいるらしい」

「そっか。で、スイッチは?なんか予定あったりするのか?」

「実はちょっと病院に行くつもりだった」

「え、マジで?」

「ウソだ」

「ウソかよ…じゃあ用事無いんだな?」

「強いて言うなら荷物が届くのを待つ用事があるな」

「それ用事って言わねーから」

「ボッスン、こうしている間にヒメコが出掛けるかもしれないぞ?」

「オレお前待ってんだけど」

「オレは準備万端だ」

「そうならそうと早く言えよ」

会話をしながら靴を履き立ち上がればボッスンは既にドアに手を掛けていて、よし。じゃあ、行くか!の声と共に今年のサプライズ計画は始まった。

広がる青空に浮かぶ昼の月が今夜の夜空を期待させていた。




サプライズ彦星
(今会いに行くよ)

2013/07/07



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