傘を叩く雨粒が次第に大きくなっていくのを聞きながら帰り道を歩く。すぐ横を通る車に泥水を飛ばされないか心配しながら角を曲がって暫く進めば見えてくる交差点では信号待ちをしている色とりどりの傘。その中には見覚えのある姿。
信号はあと30秒で変わるらしい。少し小走りに近付いた。久々に見るが元気だっただろうか。

「忍者って雨避けながら帰れねーんだな」

雑踏に掻き消されないようにと出来るだけ耳の真横を向いてそう言えば加藤は此方を見ずに、出来るわけねーだろと返した。

「今帰りか?ちょっとゲーセン行こうぜ」

高校生のノリでそう言ってみたがあまりしっくり来なかった。少し前まで高校生だったがそんなノリでそんなことを言った覚えがないからだろう。

「暫く見ない間に随分チャラくなったんだな。ナンパなら他当たれよ」

「雨より冷てーなお前」

信号が青になり歩き出す加藤の後ろをついていく。

「ナンパじゃなくてストーカーだったのか」

「自意識過剰なんじゃね?」

「じゃああんたは今どこに行こうとしてんだ?」

「そりゃあお前…未来だよ」

スタスタと早足で歩いていた加藤が立ち止まって振り返る。

「…何の用だ。あとその顔やめろ」

「だからちょっと遊びに行こうぜって言ってんだろ?」

その顔、についてはスルーした。恐らくドヤ顔だ。

「あんた普段そういうこと言わねーだろ」

何事も面倒だと思ってしまう性格からすれば先程の発言は確かに少し違和感があるだろう。

「オレだってたまにはな」

「…何かあったか?」

加藤は何かあったかなんて言う奴だっただろうか。少なくとも前に会った時は違った気がする。椿以外の人間に手を貸す場合は何も言わずに行動に移すような奴だったはずだ。その変化が周りと上手くやっていけていることを表しているようで俺が何かを聞き出さずとも大丈夫だということが見てとれた。

「何も心配いらねーよ」

「…そうかよ」

「あ、俺こっちだわ。またな」

ホントに用事あったんだな、と加藤の声を聞きながら通ったことの無い道に曲がった。たまには遠回りも悪くない。

路肩にはもう枯れたと思っていたツツジとあじさいが色鮮やかに咲いていた。




移りゆく景色は美しい

2013/06/24



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