「なぁ、聞いてくれよ」


今日はもう帰ろうとしていた。

ヒメコは買い物に行くとかで部活に出ず、
オレとスイッチはさっきまで中庭の掃除をしていた。
スイッチは部室に戻るのがめんどくさいと言って昇降口にいる。

だからオレは二人分の鞄を取りに一人で部室に戻って来ていたのだ。
あとは窓を閉めて、電気を消すだけだった。
そんなタイミングで、見覚えのある人物が部室に入ってきた


「なんだよ人生相談でもしに来たのかよ」

「オレマジで椿が好きだわ」

「うええ!?いきなりなんの告白だよ!本人に言え!本人に!何でオレに言うんだよ」

「娘さんをオレにください、みたいな?」

「勝手にしろよ」

「いやだってよ、本人に言うとか恥ずかしいだろ」

「中学生かよ…つかオレには恥ずかしくねえのかよ」

「いや、そーいうわけじゃねえ。さっきミチルにも話したんだけど、逃げられた」

なんとなく想像出来た。

「…オレも逃げていいか」

「聞いてくれよ藤崎ィ」

「イヤだ」

「つれねーなあ。誰がここまで育ててやったと思ってんだ?」

「アンタに育てられた覚えはねえよ」

「いや分かんねーよ?まだ発覚してない過去があるかもしんねーし」

「やめろよ、そういうこと言うの」

「すまんすまん」

「あ、椿!」

「マジ?」

「嘘だ」

「てめ、藤崎この野郎!」

「こんなんで騙されるかよ普通」

「はあー…藤崎の嘘も見抜けねーとはとうとうオレも末期か」

「自覚あんなら病院行けよ」

「これは椿にしか治せねー病気なんだ」

「それこそ椿ん家行けよ」

「行けるわけねーだろ」

「つかもう帰っていい?下駄箱んとこにスイッチ待たせてんだよ」

「あれか。少しでも長く好きな人と一緒にいたいーみたいな感じか?」

「うるせえよ」

「よし分かった。オレもお前の相談に乗ってやろう」

「どうしたら帰らせてくれるんだ」

「悩みを言え」

「今言ったんだけど!?」

「それは無しだ」

「なんで」

「オレをここに一人置き去りにする気か!」

「知らねーよ!一人でいたらいいだろ!きっともうすぐ椿が見回りしに来るしな」

「マジで?」

「おう。もうそろそろ来」

開きっ放しだったドアのそばに人影が見えた

「まだ残っているのかスケット団!…あれ?会長?」

「椿!」

「あれ?スイッチ?」

椿の後ろにいたのは、下駄箱に待たせていたスイッチだった。

『遅いぞボッスン』

「安形に捕まったんだよ」


「何やってんですか会長。もう下校時刻ですから、帰りますよ」

「わりぃわりぃ」

「随分軽いんですが、教科書入ってるんですか?」

生徒会室に置きっぱなしだったであろう安形の鞄を椿が差し出した。

「入ってねえけど?」

「何しに学校来てるんですか!」

「んー椿に会いに?」

「おい安形!さっきまでの悩みはなんだったんだ!」

「うるせー見てんじゃねー帰れ!」

「アンタらがここから出てくんねーと鍵閉めらんねーんだよ」

「椿が可愛い過ぎて動けない」

「こんなヤツのどこが可愛いんだ」

「あ?何言ってんだ藤崎」

「椿が可愛いってんならスイッチはその百倍可愛いだろ」

「だったらその百万倍椿の方が可愛いんじゃねえか」

「会長、声が大き」

「ほらよく見ろ藤崎!」

「よく見ろ安形!」

『やめてくれボッスン』

「やめてください会長!」




加速した感情

『椿、会長とボッスンは放っておいて帰ろう』

「ああ」




2012.01.21
5000




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