217話





オレは気付いてしまった。
この人が、会長ではなく藤崎だということを。


最初は髪質に違和感を感じた程度だった。
色々怪しい部分はあったが、一番は匂いが違ったことだった。
そしてあの動揺っぷりである。

「そういえば藤崎が、」
「ふ、藤崎がどうした!?」

「…昨日ポイ捨てしているのを目撃しました」
「なっ…そ、そうか、今度会ったら注意しなければいけないな」
「因みにその捨てられたガムの包み紙はオレが拾っておきましたので」
「そ、そうか」

「あ、一昨日は廊下でサッカーしてました」
「キ、キリはよく見てるな…」

その後もオレの知っている藤崎の情報を幾つか話した。
藤崎はやはり動揺しまくっていて見てて楽しいヤツだな、と思った。

「あと、藤崎のヤツ女子トイレに侵入してました」
「は!?…いや、アイツそんなことしてたのか?」
「ええ(嘘だけどな)」
「ふ、藤崎はそんなことしないんじゃないか!?」
「珍しいですね、藤崎を庇うなんて」
「べ、別に庇ってなどいないぞ!?」
「そうですか?」
「そ、そうだ」

「では会長。もし今ここでキスをしたら会長はどんな反応をしますか」
「は?何言って…っ」
唇を重ねれば、藤崎は今日一番の驚いた表情をしていた。
「なっ…何をする!?」

「何をそんなに動揺してらっしゃるんですか?」
「だってキ、キリが…!」
「いつものことじゃないですか」
「いつも!?そ、そうだよな、いつものこと、だな…」


照れた顔が可愛いな、と思ったのはきっとこの時が初めてではないけれど、今まで以上に目が離せなくなった。



2012.02.03



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