「やっぱ沢山貰ってんだな」
自分以外誰もいない生徒会室に現れたのは藤崎だった。

「何かくれるのかな?」
「生憎さっき知ったからなんもねーよ」
「ないのに来たの?」
「おめでとうくらい言ってやろうと思って」
「そこは、プレゼントはオレだ!とかじゃない?」
「絶対言わねーよ!大体、そんなセリフ言えんのはアンタくらいだろ」
「じゃあ何かないの?プレゼント」
「ねえよ」
「もし誕生日だってこと知ってたら何くれた?」
「知ってても何もないと思うけど」
「なんで?」
「そんなに貰ってんだからいらねーだろ」
「いるよ!藤崎からだったらなんでも大歓迎だよ!だから今すぐ買ってきて!」
「いや意味分かんねえ」

先輩に対する態度としては些か愛想が悪い。
これはちょっと意地悪してやろう。
「…何もないならこれ、貰うよ?」
藤崎の唇に人差し指を当ててやった。
つまりそういうことだ。

「な…っ!?バーカバーカ!5分で買ってくるから待ってろよ!」
顔を赤くした藤崎はそのまま飛び出していった。
「そんなに嫌がらなくてもいいのに」




5分じゃどこにも行けないことくらい誰でも分かる。
でもまさか本当に5分で戻ってくるとは…

「買えた?」
「買えなかったら戻って来ねえよ」
どうやら買ってきたらしいが藤崎の両手は何か物を持っていそうになかった。

「ほらよ」
ポケットから出てきたそれらしきものを受け取る。
プレゼントには見えない。

「…これは、」
「あ、ちょっと待て」
一度自分に渡されたそれをもう一度手にし、机にあるペン立ての中からペンを取った。

「…よし、これでどうだ!」
再び自分の手に戻ってきたのはやはりどう見ても缶コーヒーだった。

「なんでコーヒー?」
「疲れてそうだったから」
「それ絶対適当だよね…」
「ちゃんとメッセージ書いただろ!」
先ほどペンを走らせていた部分を見れば、おめでとうの文字とオレの似顔絵が書かれていた。

「まあ、いっか」
「オレの誕生日、忘れんなよ」
おめでとうの文字の下には、11/11プレゼントよろしくと書かれていた。図々しい。

「その時はオレがプレゼントってことでいいんだよね?」



それはない

2012.10.06



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