夕方、6時前。
テレビを適当に見ていると、玄関でガチャガチャと音がした。
「ただいまー」
「早かったな」
「うん。みんなお祝いしてくれるって言うんだけど、帰ってきた」
「なんで?」
瑠海はソファで友達から貰ったであろうたくさんの包みを一つずつ丁寧に開封していた。
「お兄ちゃんにプレゼント買って貰うために決まってるじゃない」
「…」
「ルミねー、この前言ってたブレスレットがいいなー!」
ほらこれ、と机の上にあった雑誌を見せられる。
「あー、」
「どうせお兄ちゃんのことだからお金持ってないんでしょ」
「まあな」
「そうだと思ったから期待してないけどね。しょうがないからケーキでいいよ、買ってきて。タルトならなんでもいいから」
瑠海は初めから期待をしていないというか、いつもよりテンションが低く哀しそうにも見えた。
「はいはい」
「今日はすんなり言うこと聞くんだ?」
「誕生日だからな」
「なんかつまんない」
「は?」
「サプライズとかないの?」
「…じゃあ、30秒でケーキとプレゼント出してやるよ」
「ホントにできるの?」
「オレマジシャンだから」
「あっそ」
「お前もうちょっと話に乗れよな」
「じゃあ、30秒数えるから」
ルミ目閉じてる、とソファに顔を埋めた。
さて、と。
音を出さずに30秒でなんとかなるか…
「…28、29、30」
「よし、オッケー!」
「…」
「…」
「ホントだ…」
机の上にはホールケーキの箱と、小さな小包。
「オレだってやれば出来んだよ」
「お金あったの?」
「ルミのせいですっからかんだけどな」
「ふーん…ありがと」
「おう。おめでとう」
母ちゃんが帰ってきたら、改めて祝おう。
なんとなく、自分の15歳の誕生日を思い出した。
2011.09.28
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