「藤崎!」

放課後、有り難くも過去の依頼者たちに祝いの言葉やプレゼントを貰い教室に荷物を取りに戻ろうとすれば呼び止められる。
毎度思うがコイツは人を呼ぶ時に怒鳴るような呼び方をするのは何故なんだ。

「なんなんだこれは」
「何って何が」
これだ、と目の前に突き出されたのは朝、遅刻ギリギリに教室に来て鞄の中から筆記用具やらなんやらを出すついでに椿に渡したプレゼントだ。

「見りゃ分かるだろ」
「なぜ子供服なのだと聞いているんだ」
適当なそれっぽい袋の中には椿の言う通り子供服が入っている。確かに説明も無しにそんなものを渡されては理由を聞きたくなるだろうが大した理由はない。

「お前みたいなヤツはプレゼントとかは帰ってから見る派じゃねーの?」
「帰りに渡されるならまだしも朝渡されたら気になってしょうがないだろう」
「まあそうだわな」

「それで、これは一体どういうことなんだ?」
「あーそれは…母ちゃんと父ちゃんがオレたちが生まれる前に買ったもんらしい」
タグも付いたままのそれは生まれたばかりの赤ちゃんには少し大きいだろう服だ。

「うちの母ちゃんはその時俺たちが双子だって知らなかったからなんで2着も同じ服買うのか分かんなかったって言ってた」
「2着?」
「双子だからお揃いってことだろ。色違いだけどな」
もう1着は母ちゃんが勝手にオレの部屋に飾っていた。

「なるほど。しかし貰ってしまってもいいのだろうか?」
「持ってても意味ねーしな。つか、お前はねーのかよプレゼント」
「何を選んでもキミは文句を言うだろうと思ってな」
「ないの!?」
「これだ」

「何これ」
「開ければ分かる」
「いや、開けなくても分かるって!図書カードだろこれ!」
「それでキミの好きな物を買うといい」
「まあ参考書とか貰うよりマシだけど…って500円!?安っ!単行本一冊しか買えないじゃん!」
「キミのはお金は掛かっていないじゃないか」
「いやお金じゃ買えない愛情が詰まってるから!」
「じゃあもう500円…」
「いらねーよ!なんなのお前?」

そこまで言って気付いたのは椿の表情がいつもの堅い雰囲気ではないということだった。

「…キミの好みが分からなかったんだ…すまない」

「そんなこと言ったらオレだってお前の好みなんか知らねーよ」

きっと似ている部分だってあるはずなんだ。

「よし、今からデパート行くぞ」
「デパート?」

「オレの好きなもん教えてやる」
寄り道はダメだとか文句を言われるのは分かっている。

「…ふん。仕方ないな。せっかくだからボクの好みも教えてやろう」
「え、マジで?つか意地張るところおかしくね?」

「生徒会室に顔を出して来るから下駄箱で待っていてくれ」
明日雪でも降んのかってくらい珍しく素直だった。

「お、おう。じゃあオレも部室覗いたら行くわ」
「ああ」

スタスタと歩き出す椿の背中を見て思い出す。
「椿!」
「なんだ」
「母ちゃんのプレゼントも買おうぜ」
「…もちろんだ」
なんだか少しだけ恥ずかしくて背中を向けて部室に向かった。



じゃあまた後で

2012.11.11



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