ヒメコと双子





「おーい!」

聞き慣れた声が呼び掛けた相手は自分じゃなく少し離れたところにいたらしい椿に向けたものだった。

「おう!弟!」
ガシッと一方的に椿の肩を組むのはヒメコで、その姿はまるでカツアゲをしているようだ。
椿も椿で少し戸惑っている様がまたカツアゲをされる気弱な学生のようである。

「なんや椿、最近うちの部けえへんなあ?今日な、アタシクッキーいっぱい作ってきてん。ちょお部室寄ってけや」
「な…ええい放せ!連れて行こうとするな!」
ヒメコの腕からすり抜けた椿はいつものように怒気の混じった声を上げた。

「なんやクッキー嫌いか?」
「いや、そういうわけではないが…」
「ほな、ええやん!ほら行こ行こー!あ、ボッスンや!おーいボッスーン!」
再度無理矢理肩を組むヒメコがこちらに手を振った。

「ほら椿、お兄ちゃんも一緒やでー?部室行こうや!なあ、ボッスン」
空いていたヒメコの右腕はあっという間にオレの肩に回されていて、さっきまで見ていたカツアゲされている学生の図に自分も加わることになっていた。

「アンタら背ぇも変わらへんねんなー」
「うるせーよ!耳元で大声出すんじゃねーよ!」
「出してへんわ!普通に喋っとんねん!うるさくないよなあ、椿?」
「少し声の大きさを絞ってほしいとは思う、」
「なんやて?」
「あ、いや…」
空気の読めない椿の発言によりオレの首が絞まっていく。
「ギブ、ギブ…!」
「さて、部室行こかー!」
「あ、ちょっ…放せ鬼塚!」



絡まれた弟とオレ

2012.04.22



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