女子が仲良い子とお揃いのキーホルダーをつけるのは世間からみたらまあ、可愛いんだと思う。
これを男同士でやったところで可愛いとは思わないだろう。
少なくともオレはそう思う。

例えば、部活の必勝祈願のミサンガとかならあるだろう。
しかしこれはどうだ?
誕生日にお揃いの『何か』をプレゼント。

いやいややっぱこういうのは女子がやるから可愛いんだろう。
この案はだめだ、やめよう。



flavor



結局、当日までベストなプレゼントを考えることが出来なかった。
もはや160の頭脳も普通レベルだ。

クラスの女子がC組に出向いているのを自分の席からただ眺める。きっとアイツは放課後には持ちきれない量のプレゼントを抱えているに違いない。

今日は一緒に昼飯食うのは無理そうだな…
あーなんかもうあれだ。今日やる気ないわ。
勉強机なんて硬いところで寝るくらいだったら生徒会室のソファで寝るわ。
多分鍵開けっ放しだしな。
よし、そうしよう。
まだ二限目終わったとこだが、そうしよう。
だってやる気出ねーもん。
でもまあ生徒会室にミチルが居て、膝枕してくれたら授業に出てやってもいいがな。




ガラガラと生徒会室の扉をスライドする。はずだった。
「あ?開いてねーのか」
なんだよ寝る気満々だったのによー
誰だよ鍵閉めたヤツ。
椿が朝来てたんだっけか?
あーもういいや、ちょっとさみぃけど屋上行くかな

踵を返そうとすれば、目の前の扉がカチャッと音を立て、ガラガラと開いた。

「安形?」
「おほっ」
「サボりに来たの?」
いやいやいや、待て。
ミチルは今C組で女子に囲まれてるはずだ。
例年のオレの考えと実話だ。
え、何幻?まぼろしぃー…じゃなくて。IKKOじゃなくて。

「なんでいんの?」
「なんでだろうね」
膝枕するためにいんの?何テレパシー?通じちゃったわけ?
「とりあえず入りなよ」
「自分の家みたいに言うなよ」
そのまま中に入って、机の上にある飴を口に入れ少し喉を潤す。

ミチルが鍵を掛けた音を聞きながらとりあえずソファに座った。
「お前今頃教室で包装紙に囲まれてるはずだろ?」

ミチルがチョコを食べながら隣に座った。
「女の子ね。例えば安形がオレにペンダントをくれたとして、それをつけてくれなかったらイヤでしょ?それと同じだよ。女の子が悲しむ顔は見たくない」

「女子が教室にプレゼント渡しに来て本人がいないのは悲しくならないのかよ」
「自分があげた物を使われないよりはマシじゃないかな」
「……」
「呆れてる?」
「いや、嫉妬してる」
「安形らしいね」

「それ、」
「ん?ああこれ?朝貰ったぶん。これとか結構オレ好みなんだよねー」
「皆お前の好みとか分かんのか」
「すごいよね、ちゃんと考えてくれてるんだよ」

「じゃあオレ何あげたらいいんだよ」
「安形がくれるんならなんでもいいって昔から言ってんじゃん」
「なんも用意してねーよ」
「知ってるよ。毎年だもん」
「だいたいのもんは貰ってんだろ」
「そうだね」
「でもやっぱ何もないのはだめだろー」
「じゃあ安形坊主にしてくれたらそれでいいよ」
「やだよやんねーよ」
「全校生徒の前で一発芸とか」
「罰ゲームだろそれ」
「授業中にいきなり『オレは宇宙からの侵略者だ!』とか」
「…」
「1日チャック全開で過ごすとか」
「…」
「…」
「…」
「…キス、してくれるとか」
「…」
「…いや、やっぱ今の無し」
「キスな、了解」
「ちょ、待っ」

制止の声を遮って口付ける。
徐々に回数を重ね、舌を入れればチョコの味がした。
あれ、そういえばオレ飴食ってたんだっけ。

「うっ…」

息をするために僅かに離れたミチルが声をあげた。

「…まずっ」
「ちょ、お前ムード!」
「いやでもこれはないだろ…!」
「そこはちょっと我慢しろよ!なんか傷つくだろ」
「まだいちご味とかだったらいいよ!?なんでよりにもよってのど飴なのさ!」
「するって分かってたらチューハイキャンディ食ってきたんだけどなあ…」
「安形ちょっとのど飴とチョコ一緒に食えよ」
「イヤだ」
「誕生日パーティーの余興だと思って食べろよ」
「ミチルを食えばいいのか?」
「話聞けよ」



もう一度ミチルに口付けて、来年はちょっとロマンチックにお揃いの『何か』を渡そうと思いながらソファにミチルを押し倒したのだった。




2011.10.06



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