bun //


(彼の好きな)





※現パロ






おめでとう、お幸せにね!
たくさんの祝福の声が飛び交う中、私も同じく拍手と共に祝福の声をあげていた。そう、私は友人の結婚を祝福する側、未だに祝福される側には回れないのだなあと張り付いた笑顔でぼんやりと考えていた。

もちろん、友人の幸せは決して建前じゃなくて心から嬉しいと思う。それに25を過ぎたばかりの年齢、まだまだ焦ることは無いとは頭では解っているつもりでも、このまま誰とも結婚しないでずーっと独り身でいるのかなとふとした時に考える。それは折角彼と都合を付けた久々のデートを急に仕事がたてこんでといういつものパターンでドタキャンされた時だったり、久びさに体を重ねた後に忙しく仕事へ向かい一人残された時だったり、、、こんな時寂しくて思ってしまうのだ、このまま彼で、ジャーファルと付き合ってていいのか、疑問。

このブーケは親友のナマエと、ブーケトスもせずに手渡しをしてくれた彼女のふんわりとした笑顔を思い出しながら、手の中のブーケを見つめる。ブーケの花は彼女の愛らしい頬と同じ色をした、ピンクがいっぱいの、幸せいっぱいのブーケだった。私は彼女の様に幸せな笑顔になれる瞬間があるのだろうか。結婚式からの帰り道、答えが見えない疑問を頭に抱え、腕にブーケをきつく抱きしめながらとぼとぼと歩く。花の香りが鼻にツンとして、少し涙が滲む。行き着く先は私の頭を悩ますジャーファルと住むマンションで、でもきっと今夜も帰るって連絡ないし、また泊まりで仕事なんだろう。一人寂しく誰もいない空気の冷たい部屋に帰るのか…せめてコンビニで温めたお弁当でも買って帰ろう。

片手には引き出物やバック、ブーケを抱え、もう片手でコンビニで買い込んだビニール袋を携えて玄関前で固まってしまった。鍵を出すために鞄の中に手を入れたいのに、結局コンビニでは弁当だけでは収まらず、大量のアルコールにおつまみも含んだビニール袋が重たくて手が上がらない。二次会で散々飲んだくせに、一人の時間を持て余しそうで気がついたらカゴがいっぱいになっていたのだ。そう、気がついたらジャーファルが好きなおつまみまで入れていて、今気づくだなんて、どれだけ無意識の仕業なんだろうと、玄関前で笑ってしまった。どうせいないのに、な。




「ナマエ…?」


ついに幻聴だろうか、そんなわけないのに、名前を呼ばれた気がした。これはだめだ、ぶんぶんと頭を振り気合いを入れて荷物を抱え込む。



「何してるんですかこんな玄関前で、折角綺麗な格好なのにそれじゃ不審者ですよ」



「え、褒められたの?貶されたの?空耳?」



今日の私の格好は勿論ヨソユキ用だ。年齢的にギリギリセーフかなと言い聞かせたピンクのふんわりとした生地のワンピ。袖はパフスリーブ、丈は短め、あんまり体のラインを強調してなくていかにも女の子を意識したデザイン。ジャーファルが前に買ってくれた服、中々着る機会がなくて、彼の前では初めて着たと思ってたのに、もっと反応くれるかと思ったのに。全く、やっと帰ってこれたと思ったら今度は自宅で酔っ払いの相手ですか、とぶつぶつ言いながら玄関を開けて私の荷物を奪ってさっさと中に入っていったジャーファル。何で帰ってきたの?いや、別に帰ってきて困るとかじゃなくて、連絡なかったし、ビックリしたというか、あ、この服のことは?言葉にならない。ああ、私、やっぱり酔ってる。



「どうしたんですか、顔が百面相ですよ。このアルコールたちも、ナマエの話も、もう明日にしましょう。明日私休み取りますから」



上手く言葉のでない私にくすりと笑んだジャーファルは、慣れた手つきで私をソファへと誘い込む。やっぱり酔いが回った私の体は為すがまま、ジャーファルの膝の上に座らされた。暫く誰もいなかったリビングはやっぱり冷えていて、けれどジャーファルの膝の上もあったかいし、抱きつかれてもっと暖まる。ぎゅうと抱きしめられて互いの熱が伝わる。さっきまでぽっかりと穴が空いていたとこにジャーファルがするりと滑り込んで来たみたい。


「….どうしたの、急に抱きついて急に休み取るなんて、珍しい…」


「私だって疲れる時があるんです。たまにはいいじゃないですか」


ふうん、と腑に落ちない返事を返したら気に食わなかったのか首筋に噛みつかれた。痛いし、くすぐったいし、恥かしい。まだお風呂にも入ってない上、私、酒臭い…。空を泳ぐ私の視線に気づいたのか、そんなすぐに襲いませんよ、だって、別に期待していた訳じゃないし。


「今日はあらかた結婚式に出席して、二次会まで参加したんでしょう?大体そういう日、次の日は休みを取ってますよね。だから私もナマエと一緒にお休みにします」


そんなあっさりと、仕事はいいのか、尋ねようにも肩にかかるジャーファルの頭がくすぐったくて。何も言うなって言われてるみたいで、黙っていた。変わりにといってはなんだけど、ジャーファルの背中に腕を回して、ぽんぽんと叩く。こんな時は、弱ってるとき、なんだろうなって感じる。


「ナマエ…お風呂入って下さい」


「は?」


「酒臭い」


顔を上げたジャーファルの顔は眉を寄せ真剣だった。


「言われなくてもわかってるよ、自分でも!もう!」


ごつんと頭突きをかましてバスタオルを取りにいく。一々言わなくたってわかってるよ、散々飲んだんだもん、誰のせいだかわかってんのか、まったく。


「ナマエ」


「ん?」


「その服とっても似合ってますよ。可愛いです」





ドアノブに伸ばしかけた手が止まる。


そんなの知ってる、だって、ジャーファルが選んでくれたじゃないってぶっきらぼうに答えて、何でもないフリをして出て行く。それでも私の閉めた扉の音はうるさく響いた。


お酒のせいだ、火照った顔が中々収まらない。ああ、もう、これだから、私はやっぱり知ってる、やっぱり私はジャーファルがいいんだ。







(20130405)




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