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(熱中症にご注意)




太陽がサンサンと、いや、じりじりと輝く午後。暑さに耐えかね宮中の者はみな室内に避難中…宮中の人口密度はあがり余計に暑い、それぞれ執務をこなしてるが汗が絶えない、ああ水でも浴びたい!



「あつー…暑くてたまんない!」
「やめてください、余計に暑くなる!」

声の持ち主はナマエとジャーファル。
ジャーファルは続けて、暑いって言うから余計に暑くなるんです、と夏の常套句を言い放つ。今年1番の暑さのせいか声に少しの苛立ちをみせている。しかし何と言われ様と暑いもんは暑い。ナマエの座る席は窓辺に近いが、いかんせん風が無い、吹いても生暖かい。ジャーファルなんて、本棚の近くで書類の山に埋れている状態。2人しかいない人口密度の薄さだが、暑いもんは暑いのだ。頭を覆い被さるクーフィーヤを脱いでやりたい衝動に駆られるが、恋人兼上司(ここ重要)のジャーファルが脱がない限りそれは叶わない。このクソ暑い日にクソ真面目にしてなくてもいいのに、ここんとこ毎日ほぼ半裸状態の王サマを少し見習えばいいのに、ナマエは汗ばんだ手で握っていたペンを止め、書類で顔を仰ぐ。いっちょ脱がせてやろうか。ニヤリと悪戯心が顔に出てしまう。今の顔を見られたらきっとジャーファルは近寄るなと冷ややかな目で見るだろう。ナマエがこの顔をする時は決まって何か仕掛けてくる時だ。お互い長い付き合いである、大体のことは想像がつく。

「ほら、そこ、手を止めない」

「止めてませーん、仰いでます」


ジャーファルのイライラの琴線に触れる。彼にしては珍しくイラァッとした表情が顔に出てる。その顔を見るともっとからかってやりたくなる。普段から仕事中は中々素を出して来ない彼だから尚更、今こそ乱してみたい。ナマエは更に続ける。


「ねえねえ、ジャーファルだって暑いでしょ?もう脱いじゃおうよ、ね?」


自身の机を離れ、ジャーファルの机に近づく。ジャーファルだって暑いのだ。その証拠に額にはじんわり滲む汗が見られる。自分のクーフィーヤを脱ぎ、ナマエはジャーファルのそれにも手をかける。ほら、涼しくなったでしょ?そう言ってジャーファルの頭を撫でると、ジャーファルはそうですねと言いながらとナマエに向き合う。


「ジャーファル…」

「なんです?」

「…頭汗でベタベタしてる!やだ!触るんじゃなかった!手が汗で気持ち悪い!」

「人の頭撫で回しといてその台詞はないでしょう!」


こんな汗かくまで我慢しなくてもいいだろうに、真面目な性格は面倒だ。もちろんそこが彼の良いところだともナマエはわかっている。まあ自分自身も彼に付き合い正装のままでいるのだからお互い様かと笑みが漏れる。クスッと笑いながらハゲるよ、と耳もとでつぶやく。悪戯心が疼いてしまった。



「ナマエ」



あれ?怒らないのだろうか?予想外に冷静な顔をしているジャーファルに疑問の顔をむける、まさにきょとん。いつもならハゲネタは禁句の筈なのに。ジャーファルはいたって冷静なまま、というより寧ろニヤリとしているような表情を見せ、ナマエの腰を引き寄せる。彼女の唇に手を伸ばしてきた。そのままなぞるように首筋へ手を流す。汗でベベタつく首元に手を触れられるのは若干気恥ずかしい、その感覚にぞくり、と背筋が疼く。しかし手は止まらない、するすると下へ下へと流れ少し頬に熱が集まる。



「ナマエこそこんなに汗をかいて、」



官服に手をかけるとあれよあれよとはだけていくナマエの肌。水分をためた胸の谷間に触れるジャーファル。その顔は先程のナマエより悪戯心に満ちてるような満面の笑み。このところは暑いせいか、ナマエは下着をつけていないことをジャーファルは知っている。無論この行為は故意である。


「大体職務に付くというのに身だしなみがなってませんね」


「暑いんだもの、無い方が楽よ?」


「下着もつけないで部屋で男と二人きりになるなんて。私と何がしたかったんですか?」


暑い、暑い、シンドリアは南国の島だ。気候のせいだけではない、ジャーファルにそんな言葉を、しかも執務中に言われるなんて。ナマエの顔がかっと熱くなる。そんな顔しても、煽るだけです。ジャーファルはその言葉を最後に、ナマエの手に自身の手を絡め取り、抱き寄せ、瞬時に唇を塞ぐ。



暑い、暑い午後は始まったばっかりだ。




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(シャル、聞いた?ナマエたんとジャーファルさん夕方に熱中症で倒れたって)
(あの2人あっつい部屋に篭って仕事ばっかしてたもんなあ)




(20121224)




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