翁と少年






綺麗な銀髪、ただそう思ったのだ。
ジャーファルがお風呂から上がってから、わたしも続いて湯船に浸かっていた。やっぱり頭を撫でるなんて、わたしもジャーファルも十分年頃であるし、それだけで恥ずかしくなってしまう微妙な年代なんだ。改めて考えると余計恥かしい。ぶくぶくと、音をたてながら湯船に沈む。こんなこといちいち考えてたら身が持たない、思い直して勢いよく湯船を出た。



炬燵部屋に戻ると、銀髪と金髪が揃って炬燵に入っていた。


「やっとあがったか。」

「おじいちゃん起きてたの?」


「ああ、蜜柑が食べたくなってね。」


金髪のじいちゃんは蜜柑が大好物だ。確かにさっきまでなかった蜜柑が沢山籠に乗って炬燵に置いてあった。おじいちゃんは既に幾つか食べたであろう形跡を机にいっぱい広げていた。わたしも二人にならって炬燵に足を入れて、蜜柑に手を伸ばす。銀髪のジャーファルはおじいちゃんと向かい合わせに座っていて、心ここにあらず、といった具合だった。


「二人で何話してたの?」


「なに、ナマエは見た目じゃわからんが若い割に脱ぐとイイもん持ってるんだぞって教えてただけだよ。」


「なななななに話してんの!」


せっかく持ち直したのに、また頬が勝手に染まる。くそぉ、おじいちゃん、新しいオモチャもらった子供みたいに生き生きしてからかってくる。わたしとは裏腹に、ジャーファルは依然変わらない様子で、きっと何かを誤魔化したんだろうな。こんな時、どう問い詰めたっておじいちゃんには勝てない。


「で、今夜ジャーファルはどこで寝ればいい?」


蜜柑を一つ口にくわえて、あえてわかりやすいように怒りの気持ちを込めて金髪ジジイに問いかけた。間違えた、おじいちゃんに。部屋は沢山ある無駄にでかい家だし、どの部屋を使ってもらうか一応おじいちゃんに確認はとっておかないと。


「おお!それを言いにきたんだよ。実は部屋はいっぱいあるんだが、如何せん年寄りの一人暮らしだからな。掃除が行き届いておらんのだ。だからナマエの部屋に泊まってもらおうと思ってな。」


この年寄りは時々とんでもないことを口走る。さっきからお察しの通り、要は恥かしい。別に、出会ったばかりのジャーファルを意識してるなんてことはない、はず…ただ思春期の男子女子がおんなじ部屋で寝るなんて!おじいちゃん!何言ってんの!


「私は構いません。お世話になる身ですしお任せします。」


いとも簡単に快諾したジャーファル。
彼の立場ならまあ、そういう他ないだろう。一階は外気が二階より入ってくるから、炬燵部屋で寝るなんてとんでもないし。確かにおじいちゃんの言う通り、二階の空いてる部屋は荷物こそないけれど埃が積もっているのをわたしも知っていた。だから、指示された部屋を今から掃除しに行くつもりでいたけど、、襖の上の時計を見ると、既に零時前だった。確かに眠いはずだ。私は思春期の淡い気持ちより、眠気をとった。


「じゃ、一緒に寝ようかジャーファル。」



(20130102)






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