学校という場所は、私は好きじゃない。それは昔から変わらない気持ちで、高校になった今でもそのまんま変わらない。理由は単純、ただ馴染めないのだ。同級生から話しかけられれば、答えるし、それなりに楽しく会話もできる。誰も彼も来るモノ拒まずだったから、周りからは浮いた存在だったと思う。けど、イジメの対象になる程でもなかったらしく平穏無事な学校生活を送っていた。でもそれはいつも一人っきりということで、とても退屈な毎日だった。家でも、学校でも、いつも独りだった。
だから、おじいちゃんちに来ても変わらないと思っていた。でも家はジャーファルが来て賑やかになった。学校は…どうせ相変わらずだろうと思っていたのに。
嘘みたいに友達ができたのだ。
まだ新学期に入って一週間経ったくらいなのに、皆私を囲んで毎日くだらないおしゃべりをしてる。これも全部、おじいちゃんのおかげ…。学校ではただの転校生扱いではなく、あの変人おじいちゃんの孫が転校してきた!といった驚きと興味の対象だった。始まりはそうだったけど、それがきっかけで皆と話せるようになったし、おじいちゃんがこの土地に馴染んでるお陰で私もあっという間に馴染めた。おじいちゃんには本当に、感謝。
▽
「ねえ聞いてる?ナマエ?」
「ん?」
授業も一通り終わり、帰り支度をしている時だった。数人の笑顔を携えたクラスメートに囲まれて私は尋問されていた。皆の笑顔は黒いモノではなく、キラキラした輝きを放っているような…
「だから!ナマエの家にいる、銀髪の男の子!誰?親戚?留学生とかなの?!」
「サラサラの銀髪だったよね!顔はちょっとそばかすがあったみたい!」
「あ、あと、外国の人だよね?なんで着物着てるの?日本の文化勘違い系?」
「でもさあ……」
「「「カッコよかったよねー!」」」
最後は皆の声が抜群に揃った。
彼女達の話をまとめて見ると、今朝私を迎えに来たところ既に私は出た後で、ジャーファルが手を降り見送ってるとこに出くわしたらしい。おはようございますと一人が声をかけて見たら、ジャーファルは同じく返す訳でも無くただ、ふんわりと笑って軽くお辞儀をしたそうで、、、
口々にジャーファルを褒める彼女たちの甲高い言葉が頭の片隅から入ってきて、ずきん、ずきん、と頭痛がする。
おじいちゃんの知り合いだよ、と答えれば納得してくれたみたいで慌てて席を立ち、バイバイとだけ言い残して一目散にその場を離れた。
…危なかった…
ジャーファルのこと聞かれるなんて思ってもいなかった。ジャーファルがウチに来た本当の理由なんて私達だってよくわからないし、雪の降る日に突然現れたなんて、もっと言えない。
それに、
みんなジャーファルのこと気にしてた、カッコいいって…。
ずきん、ずきん、と痛みがする。
今度は頭の中じゃなくて、胸の奥の方で…。きゅうきゅうと締め付ける痛みの正体に気づかない振りをして私は帰り道を急いだ。
(20130504)
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