私の本当の思いは




とても突然だった。
穏やかな日々を過ごしすぎた、私への罰なのだろうか、ナマエと喧嘩をした。元はと言えば、夕飯のカレーの話をしていただけなのに、事は彼女が、私に元の世界に帰りたいかどうか尋ねたとこから始まった。

帰りたくない、それは嘘になる。こちらでの日々は鬱蒼とした過去を持つ私にとって、何よりも変え難い穏やかな日々を与えてくれた。けれど、やっぱりシンや仲間のことが気になって仕方が無いのだ。しかし、一番驚きを隠せなかったのは、自分がナマエにこうして尋ねられるまで、帰りたいと思うことを忘れていたのだ。ナマエに、わたしと離れて寂しくないの?そう聞かれて解るのだ。私はここの世界から、ナマエから離れたくないから、忘れるようにしていたのかもしれない。

それではだめだ。今の感情に任せてここに留まるなんて、私はやるべきことがある。帰らなくちゃいけない。彼女には、私は元の世界が大事で、帰ってしまったらナマエのことを忘れてしまうと言われ、少し哀しくなる。

私はこの世界も大事で、なによりナマエと一緒に過ごすのが大事で、上手く伝えられない自分がもどかしい。どちらの世界を選ぶかなんて、まだわからない。まして、私に選ぶ時はくるのだろうか。私は、本当は、どうしたらいいのだろうか、自分がわからない。けど、ナマエのことを忘れるなんて、そんなことは絶対にない。それだけは約束できるのに。

その言葉で、ナマエを哀しませてしまった。何がいけなかったのか、わからない。今まで、女の子とこうして仲良くなることもなくて、正直女心というものがわからないということもあるけど、これだけはわかる。きっと、私がナマエを大事に思っていることと同じように、彼女も私を大事に思ってくれているのだろう、と。だから感情が高ぶってしまい、時計がーールフが騒ついたのだろう。

彼女を追いかけて部屋の扉を開けるけど、中は暗くて、もう布団に入り込んでる様だった。かける言葉が見つからなくて、しばらくして扉を閉めてしまった。

扉の前でしゃがみ込み頭を抱える、こんな時、どうすればいいか、ふと、シンが教えてくれたのを思い出す。


いいかジャーファル、こんな時は魔法の言葉だ。喧嘩をしたら、こう言うんだーーー


この言葉を伝えなくては。
シンに出会う前の、私にそっくりな、"ひとりぼっち"の彼女を私は独りにしておけないのだ。明日、落ち着いたら言おう。ちゃんと一言、仲直りの魔法の言葉、ごめんなさい、と。



(20130116)




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