一緒に寝ようと言うと語弊がある。正しくは、おんなじ部屋に寝よう、である。わたしとジャーファルは布団を並べ湯たんぽであったまりながら寝るところ。足元がじんわりあったかくてふつふつと眠気がやってくる。
「ナマエ、起きてますか?」
「…うん、まだおきてるよ。」
ジャーファルには悪いけど、もう落ちる寸前。瞼が異常に重たい。それもそうか、突然彼がやって来てバタバタして、もうこの時間ならいつも寝てるし、眠いはずだ。
「私の話を少し聞いてくれますか?」
「…うん…?」
もう、意識はぼんやり、今にも夢の世界に引き込まれそう。ジャーファルがもぞっと動いて身体をこちらを向けたのがわかったけど、わたしは天井を見上げたまま、正確には目は閉じている。
「私は、ここではない別の世界から来ました。」
「うん。」
「私の世界はここより暖かくて、そこには仲間がいます。」
「…うん。」
「家族ではありませんが大切な仲間です。私を含め皆ナマエが想像もつかないような不思議な力を使います。魔法を使う者もいます。」
「……うん。」
「その中に私の大事な人がいます。恩人です。いまその人と、仲間たちと平和な国を作っているところです。」
「………うん。」
「でもなぜか気づいたらここにいて、あなたがいました。」
「…………うん。」
「ナマエは私の髪を綺麗だと言ってくれました。」
「……………うん。」
「それだけで私は嬉しかった、こちらにきて良かった、とも思えました。」
「……………うん。」
「私はあなたを救いにきたのでしょうか。」
「……………………うん。」
「…ナマエ聞いてますか?」
「…………………………うん、」
…違う世界…不思議な力、魔法…大事な人がいる…………髪の毛……救いに…?
とろんとした意識の中、ジャーファルが話し出したのはお伽話みたいで、その語りが耳に子守唄のように入ってくる。けど、眠気のせいか彼の声は断片的にひとつひとつしかわからない。
なによりも、誰かと隣に並んで眠ることが嬉しくて。心にぽぅとアカリが灯ったようで、私は布団の隙間から手を伸ばした。
「…ジャーファル、来てくれてありがとう。」
わたしの言葉に応じてくれたのだろうか、ジャーファルが同じように手を伸ばしてきて触れ合った手と手を握り合った。
おやすみ、とお互いに挨拶をして眠りにつく。繋いだジャーファルの手はとてもあたたかかった。
(20130106)
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