Delicious Sand!




プレーン、チーズ、ココアにオニオン

クリームチーズ、アボカド、サーモン!




夜明けへと向かう淡く色付いた星空を窓に映し出すベッドサイド。

暖かな優しい温もりを身体中に感じながら、
私はベッドの中で微睡みに目を細める。

昼間に干したばかりのベッドシーツはほのかに太陽の香りがした。
それに混じるベルガモットの上品な香りは、
自身の隣に横たわるバージルさんが着ているシャツの香り。
時折逞しい腕が動かされると、すらりと伸びた指先が髪をそっと撫でてくれる。
その度にベルガモットがふわりと香って更にうっとりしてしまうのだ。

そして私が寝付けない夜は、蒼い悪魔には珍しい空気に馴染むくらい穏やかな声がそっと降り注ぐ。澄んだ冬空のなだらかな流星みたいに。
宥める様に優しいその行為を受ける度に幸せを噛み締めるのだった。



「まだ寝付けないのか」



本日もまた、悪魔には似付かわしくない穏やかな声が耳を撫でる。
夜明けが近いのに気だるい声音を感じさせないのは流石と言うべきだろうか。
普段は凛とした冷たい鋭さが宿る美声がこうも優しく響くなんて。
自分だけの特権だと、どうか今だけは自惚らせて欲しい。

バージルさんはその言葉と同時に、髪を撫でていた手を私の肩に当てがった。
そっと肩を引き寄せられれば額がバージルさんの鎖骨部分にコツンと当たる。



「ちょっと、考え事をしてたんです」



一連の動作から気恥ずかしくなって口元が自然と緩んでしまう。
だらしなく緩んだ口元に視線を落としたのか、彼の身体が微かに揺れた。
どうやら笑ったらしい。



「お前の事だ。どうせ朝食の献立でも考えていたんだろう」


「え!」



ずばり、と脳内で思い描いていた事を当てられて思わず肩を揺らしてしまう。

だけどよくよく考えれば、
就寝する前はバージルさんに朝食の内容を相談する事が度々ある。
内心を当てられて、何だかバージルさんと繋がった感じがして嬉しかったんだけど…冷静になれば容易に考え付く事だよね。

小さく苦笑いをしてから、
気恥ずかしさを誤魔化すように蒼い悪魔の逞しい胸板へと顔を埋めた。



「ベーグルに何を挟もうかなぁって思って」



くぐもった私の声が静かな寝室に広がれば、軽いため息と共に大好きな声が降ってくる。



「好きなものを挟めば良いだろう」



バージルさんの肩元をさらり、と銀色の髪が滑り落ちる。
普段はきちっとオールバックにセットされている髪は就寝時には降ろされる。
そして窓辺から差し込む月明かりを帯びた銀の髪は、どんな物よりも美しくて儚い。


私は恍惚と手を伸ばして銀色の糸を指の隙間に通す。
絹糸の様に柔らかな感触は女性の自分が羨ましく思ってしまうほど。



「じゃあ、バージルさんを挟んじゃおうかなぁ」



そう冗談混じりに笑えば、
銀色の髪に触れていた手にバージルさんの逞しい指が強引に絡まった。

慌ててバージルさんを見つめると、鋭く蒼い双眸が私を見据えている。
その蒼い双眸に熱い何かが渦巻いている気がして、思わず心臓が悲鳴を上げる。



「…面白いことを言う」



低い声で囁かれれば、身体中に電流が駆け巡って動けなくなってしまう。

自分の頭部の下に差し込まれているバージルさんの逞しい腕は、
その関節を折り曲げてくしゃりと私の髪を撫でる。
絡まり合った互いの手をそっと口元に寄せたバージルさんは指先に軽く唇を落とした。



「なら、俺はお前を挟むとしよう。―――文句は言わせん」



そうして妖艶に口角を上げた蒼い悪魔に、
堪らず頬を高揚させてもう一度逞しい胸板へと顔を埋めるのであった。

ベッドの温もりと、バージルさんの温もりが交じり合って私を包み込む夜明け。





プレーン、チーズ、ココアにオニオン

クリームチーズ、アボカド、サーモン




And welcome breakfast with loved ones.




 
 




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