高校一年になった冬。
やはり今年も誕生日というやつはやってきた。べつに特別な日ではない、と思う。ここに来た今、僕にとって昨年ほどの誕生日にはなり得ないと。
寂しいわけじゃない、後悔しているわけでもない。普通に友人からも祝われたし、プレゼントだってそこそこ貰った。ただそこに、昨年までの仲間の顔が無いだけ。それだけなのだ。

「あっレオ姉なにそれ?」

ジャージの袖に腕を通したとき、小太郎がそんなことを言っていた。玲央が何かを持っているらしい。それは良いがさっさと着替えて練習を始めろ。はあと溜め息を吐くと少し場の雰囲気が凍り付いた。それを見かねた玲央はその何かを持ったままこちらへ慌てて走り寄ってくる。あれは何なのだろうか。僅かに首を傾げて玲央を見上げると、彼…いや、彼女…?まあとにかく玲央は手に持っているものを僕に差し出して怪訝そうに口を開いた。

「これ、部室の前に置いてあったのよ…差出人も書いてなくて」
「中身は?」
「花みたい。あと、ハッピーバースデーってカードが入っていたから多分征ちゃん宛だと思うけれど」

僕宛て?ますます首を傾げる。とりあえず受け取って中をのぞく。確かに花がはいっている。この花には見覚えがあった。薄々差出人に見当をつけつつ、メッセージカードに目を通す。玲央の言葉通り、ハッピーバースデーと書かれていた。何だか懐かしく感じる字体で。ああ、やはり。確信して薄く笑う。玲央はそんな僕を疑問符を頭上に浮かべたまま見つめた。

「それ、何なのかしら?あまり見たことのない花ね」

そう言って口元に手をあてる。まさか誕生日にこんな花を贈られるとは思ってもみなかった。面白い、さすが昨年の今日、自信満々に言っていただけはある。あれはこのことを指していたのか。いや、正確には少し違うのかもしれないけれど。
ついていけないといった感じの玲央を見かねて花の名を。

「この花は、アメリカイヌホオズキだよ」

前もそう同じように教えて、馬鹿みたいな言葉が返ってきたのはよく覚えている。それがよくもまあ僕にプレゼントするまでに至ったものだ。
イヌホオズキ、と復唱して彼は首を傾げる。花の一つを千切って、光に透かしてみた。ああ、本当に面白いものだ。

「これには花言葉があってね」

楽しげにそう言ってみせれば玲央は興味を示した。その様子を視界の端で確認してから。

「男への死の贈り物」

案の定、玲央は表情を凍らせた。
確かに、一般的に見れば不謹慎だと思うのが普通なんだろう。しかし、そう、僕宛てならば。僕への死なら。意味は大きく変わってくるのだ。
黒子と共に誠凛へ行った彼女は、僕に死を与えると言っている。彼女だけではなく、黒子も、緑間も。きっと同じように。何と愉快なのかとつい笑ってしまう。

きっとこれは宣戦布告。本当に僕が欲しがっていたものを僕に与えるための。
別に欲しがった事なんて一度も無かったけれど。彼らからすればそう見えたのかもしれない。なんて。

「征ちゃん、その差出人って一体誰なの?」

これだから愛しいのだ。

「… オレ の、幼なじみだよ」


(愛を込めて死ねと言う)
やれるものならやってみな

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -