隼をお兄ちゃん呼びしてみる


そう、ちょっとした出来心ってやつ、悪いことを考えてたわけじゃないんだけど結果的にそうなった。特に下心があったわけでもなく、ただ単におふざけで言ってみただけで。きっと、何をバカなことを言っているんだって、いつもみたく頭を不器用に撫でてくるんだろうなぁって思っていなのに。
どうして今、私は隼に押し倒されてるんだろう。

「あ、の…隼?」
「……違うだろう、なまえ。お兄ちゃん、だ」
「え」

この人何言ってるんだろう。恋人に対して抱く感想じゃないけれど、そう表現せざるを得ない。お兄ちゃん。確かに私はさっき、隼に対してぎゅっと甘えるように抱きつきながら、お兄ちゃんと呼んでみた。本当に、特に意味なんてなくって、いつも瑠璃ちゃんがそう呼んでいるから私も呼んでみたかっただけ、なのに。

「お、おにい、ちゃん…?」
「っ」

隼が口元を押さえて、真っ赤になった顔を歪めている。一体、どういう状況なんだろうコレ。いい加減身体を退いて欲しくて、彼の胸板を押し返……せなかった。押し返そうとした瞬間、両手をとられ指を絡ませられる。今迄押し倒されていただけだったのに、隼は私の腰あたりに乗っかって馬乗りになる。その状態でハアハアと荒く呼吸をする隼はまさしく変態そのものだ。え、え…。

「なまえっ」
「え、ちょ、隼…」
「オレを煽るようなことをしたお前が悪い。あと、また呼び名戻ってるぞ」
「煽ってなんか……んっ…ふ、あっ」

性急な手つきで頬を撫で付けられ、唇はあっという間に奪われる。少しカサついた隼の唇。ねっとりとした舌が私の口内を乱暴に舐り、息をつかせるまもなく舌と舌の追いかけっこを始める。いつだって、私がすぐ負けちゃうんだけど。じゅるじゅると私の舌に吸い付いて、唾液がお互いの口の端から零れた。

「あ、んっ…ふぁあ……」
「なまえ、呼べ」
「ひあ…ん……しゅ……おにい、ちゃん…?」
「そうだ、いい子だななまえ。ご褒美をやろう」

そう言って、軽いリップ音をたてて唇に触れたかと思えば、そこから舌を這わせて下降していく。唇から首へ、そして胸元へ。ああ、もう、これ、隼のペースにのまれちゃったなぁ。

「んっおに、いちゃん……くすぐ、ったい…」
「ちゃんと気持よくしてやる……ん」
「ひゃあああ!」

服越しに胸のいただきを食まれて、思わず甲高い声をあげた。それまで焦らすように舌を這わせていただけの隼が、私の声に気を良くしたらしく、彼の指も舌も私に快楽を与えようとあらゆる箇所を弄り始める。その度に、びくびくと身体を揺らした。

「あっああ…」
「いい子だ、なまえ」

チカチカする視界に、酷く欲情した隼の顔が映る。霞みゆく思考の片隅で、もう隼のことをお兄ちゃん呼びするのはやめておこうと、固く誓った。
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