女の子を取り合うユートとユーゴ

右手には黒に身を包んだ、赤いスカーフが目につく少年。左手には白のライダースーツに身を包んだ、前髪の黄色が目立つ少年。この2人に、痛くない程度に強く掴まれた両手は一向に離される気配がない。いい加減にしてほしいものだ。

「いい加減、手を離したらどうだ融合の手先」
「ユーゴーじゃねぇユーゴだ!それに!離すのはてめぇだ!オレの大事なもん奪っときながらまだそれだけじゃ足りねぇってのか!?」
「それこそこちらの台詞だ!」

どっちも離せ、などと今にも殴りかかりそうなほど睨み合う2人に口を挟む勇気などない。普通に怖い。
どうしてこうなったのかと、言い争いを聞き流しつつ思い返す。ええと、確か…?

「……」

なんてことない、ただの偶然だった。黒の彼、ユートとは塾帰りに暴漢に襲われそうになったところを救われたのが初めで、それからは会う度に談笑するくらいの仲だ。白の彼、ユーゴは、腹が減ったと彼が公園で蹲っていたところを通りかかり、持っていたホットドッグをあげたことがきっかけだったはず。そう、私が知る限りこの2人に接点はなくって、私は2人と偶然出会ったただの一般人。

「行き倒れを助けたという話を聞いてはいたが、まさか貴様だったとは」
「悪いやつから助けてもらったってーから、良い奴なんだと思ってたのにテメェかよ!」

なんでこの2人こうも仲が悪いんだ…。知り合いみたいだし、多分何かあったんだろうけど、詮索する気はない。怖い。

「えっと、ユート、ユーゴ…?」
「……なまえ、震えているな。怖い思いをさせてすまない、今すぐこいつを排除する」
「あァ?なまえ、悪いこたぁ言わねぇ。こいつはオレの大事なもん奪った悪いやつだ!こいつにだけはついてくなよ!」
「あ、あ、あの!!とりあえず離してください!」

思い切って大きく声を張り上げる。びくっと2人の手の力が弱まった隙に、急いで2人から離れた。早まる鼓動を落ち着かせつつ、彼らに顔を向けると……なんだか2人ともショックを受けたような顔で口を半開きにしていた。

「…え、あの…?」
「す、すまないなまえ」
「悪かったよ…」

急にしおらしくなってどうしたというんだろう。先ほどまでの、鋭い目つきで相手を睨んでいた2人は何処へやら。一変して肩を落とし、反省しています、という雰囲気を見せる。そんな、なんか、私が悪いみたいだ。

「いえ、私も急に怒鳴って…ごめんなさい」
「君は悪くない。オレたちは君のことを顧みず、言い争いをしてしまった」
「ああ…手もずっと握ってたしな。痛くなかったか?手、見せてみろよ」

自然な動作でユーゴに手をとられ、宥めるようにユートが私の頭を撫でる。どういう状況なんだろうこれ、ついていけてないの私だけかな。そんなことないよね。誰だってびっくりするよね。
混乱して、自分の思考に閉じこもり俯いていた私には、引きつった笑みを浮かべて睨み合う2人の表情は見えなかった。
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