短パン黒咲と平和槍
(ギャグ次元)


お腹が痛い。
否別に、何か変なものを食べてお腹を壊したとか、月に一度の女の子の日だからとかそういうものじゃなくて。そう、正確に言えば、お腹じゃなくて腹筋だ。よく言うでしょ、すごく面白いものを見てお腹を抱えて笑うやつ。今の私はまさしくそれだ。

「ふっ…ぷくく…」
「おい、いつまで笑ってるんだ」
「あっはは…ごめっ」

笑いすぎてその場に座り込んだ私を、ご機嫌斜めで睨みつけてくる隼。表情を歪めてても造形が整っている人はかっこいいなぁなんて心の片隅で思いつつ、目頭の涙を拭った。どうして私が立てないほど笑っているのか、何故隼がこうも不機嫌なのか。(眉間に皺はいつものことだけど)それは全て隼の服装の問題だ。

「おーい、なまえ、黒咲。もう着替え……ぶっ」
「……良い度胸だ榊遊矢」
「わ、わ!ごめんって!」

控えめのノックの後すぐに扉が開き、入ってきたのは遊矢。いつものラフな学校の制服ではなく、まるでどこかの探検隊のような半袖短パンの衣服に身を包んでいる。今ランサーズは全員、どこぞの眼鏡隊長のせいで同じ格好だ。まあ、ここまで言えばわかると思うけど、ランサーズメンバーである私と隼も、同じ格好をしている。遊矢は引きつった笑みを浮かべながら、先に行ってるからな!と走って行ってしまった。

「隼ー、遊矢にあたっちゃ、だ、だめだよ」
「笑いながら言うな!全く……オレたちは遊ぶために集まったわけでは…」
「まあまあ…気持ちはわかるけど。それより、ほら、遊矢が呼びに来てくれたんだから行こうよ」

嫌がる隼の手をひいて無理矢理立ち上がらせる。渋々といった風に立ち上がる隼は、どこか落ち着かない様子だ。まあ、普段露出する服なんて着てないもんね、しょうがない。

「失礼しまーす」
「おっせーぞ!この俺様を待たせるなんて良いどきょ……ぶっは!」
「…おい赤馬零児、今から1人メンバーは減るが問題ないな」
「ないわけがないだろう。彼も、君と同じ選ばれた………否、とにかく駄目だ」
「社長さん?なんで言い淀んでんだよ!俺だって!俺だってランサーズの一員なんだぞ!」
「うるさいぞお前」

入室した私達を、正確には隼を見た沢渡が明らかにバカにしたように笑う。沢渡も同じ服を着ているはずなんだけど、まあ彼はこういうの似合うからね。眉間の皺を増やして苛立ちを露わにする隼をどうどうと落ち着かせつつ、部屋に集まったメンバーを見渡す。
あははと乾いた笑みを浮かべる遊矢と、黙りの権現坂。ぎゃあぎゃあと騒ぐ沢渡に、それをうるさいと睨みつけるセレナ。にまにまと楽しそうに笑うデニスは、何を考えているんだかよくわからない。レイラはいつも通りの服装で黙って座っている。忍者…はいないみたいだけど。

「ていうか、なんで私達はトレジャーハンターみたいなことになってるのに、隊長はディーラー?」
「リーダーだからだ。ちなみに、黒咲、なまえ、そしてセレナの分もある」
「なんで?!」
「なんでもだ。君たち3人には後でこちらの服も着用してもらう」

なんだろうか、心なしか隊長の声色がいつもより楽しそうだ。私達は着せ替え人形じゃないんだけどなぁ。まあ、何を言ったところで隊長がやめるとは思えないし、私は別にいいんだけど、問題は…。

「ふざけるな赤馬零児!こんな巫山戯た服を着させた挙句、まだあるというのか」
「これも、ランサーズ内での親交を深めるためだ」
「物は言いようだな。オレたちを玩具にするのはやめろ」

今にもリアルファイトをおっ始めそうなくらい、隼の苛立ちゲージが上がっていくのがわかる。ランサーズは対アカデミアのための組織であって、仲良しこよしするつもりはない、と言いたいんだろう。
隊長は眼鏡をくいっと指で押し上げ、ふ、と笑みを浮かべた。

「にしても黒咲、君も榊遊矢たちとあまり年齢は変わらないはずだが……思ったよりも似合わないな」
「やはり慣れ合いなどごめんだオレは1人ででもアカデミアへ乗り込む」
「駄目に決まってるでしょ」
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