愚かな僕らは求め合う

段々と覚醒してきた意識が、なんだか温かい温度を感じ取る。
とても心地の良い温度、これはきっと誰かの体温……あれ?誰かの体温ってことは、じゃあ誰かが私の隣で眠っている?ハッとして瞼を開けると、目の前には恋人の凌牙の顔。
…………。
数秒、思考が停止したが、すぐに思い出す。そうだ、今日は凌牙の家に遊びに来てて、でも私途中で眠くなっちゃって……。多分、凌牙が彼の部屋まで運んでくれて、そのまま一緒に寝ちゃったんだ。
首より下の方に視線を向けると、服は寝る前と同じように着ていて、寝返りをうったりしたからか、少し皺になっていた。どうやら、何もしないでいてくれたらしい。
油断をするとすぐにそういう雰囲気に持っていこうとするから、気が抜けない。凌牙との行為が、嫌いなわけじゃないんだけど、なんていうか、恥ずかしいし疲れる。くっついたりするのは、平気なんだけどなぁ。
さて。
部屋の壁にある時計を見れば、時刻は夕方の4時半すぎ。窓から差す陽の光も心なしかオレンジ色に輝いている。
特に何かしようと思ったわけではなく、ただ単に起き上がろうとして上半身を起こそうとする。が、


「うわっ」


寝ているはずの凌牙が、急にこちらに手を伸ばして私のお腹へと手を回した。
そのせいでガクンとバランスを崩して再びベッドへと身体を預ける。痛くはないが、びっくりした。
まさか起きているのではと思い、凌牙の顔を凝視する。
……動きはない。けれど、寝ているはずないのだ。
ツンツンと凌牙の頬をつついてみる、反応はなし。頬をむにゅっと摘んでみる、反応はなし。
それなら、と凌牙の鼻を摘んでみた。1秒…3秒…7秒……


「ぶっは…おい!」
「あ、やっぱり起きてた?」
「馬鹿。鼻摘まれたら、寝てても息切れで起きるだろうが……ったく」


凌牙の鼻を摘んでいた手をとられ、身体を引き寄せられる。服に余計皺ができてしまったけど、凌牙はお構いなしみたいだ。
お互いの肩に顔をのせている状態になり、凌牙の吐息が私の首筋に、私の吐息が凌牙の首筋にあたる。ちょっと、くすぐったい。
どうせ離してもくれないだろうし、しょうがないから凌牙の背中に手を回してぎゅっと抱きついた。
その時、凌牙の身体がぴくんと反応して、彼の深い溜息が私の鼓膜と首筋を刺激する。


「ん、なに?」
「…当たってんだよ」
「なにが?」
「…………胸」


言いづらそうに呟いた凌牙を横目で見ると、ほんのり紅くなっている頬が見えた。
これはあまり良くない流れなのでは、と思い背中に回していた腕を離そうとしたが既に遅かった。
私のお腹から背中に回されていた凌牙の手が、なんだか、何かを沸き立たせるような動きに変わる。凌牙の少しひんやりとした手の温度が、なんだか気持ちいい。
けど、その手が段々と上へと登って、ブラジャーに触れた瞬間に漸くハッとする。


「ふ、あ……だめ、ねえ、凌牙ぁ」
「そんなだらしない声出して、ん、何言ってんだよ」
「だって……あ、もう、ホック外しちゃダメだってばぁ」


器用にも彼は片手でブラのホックを外していく。
そして待ち切れないとでもいうように、性急に私の胸に触れて、ふにふにとその感触を味わい始めた。
くすぐったさと同時にこみ上げてくる何かを抑えきれずに、唇から意味のない言葉が途切れ途切れに零れ出る。


「くう……あっ、や……りょう、がぁ…む、んんっ」


彼の名を呼べば、衝動に任せるかのように勢い良く唇を押し付けられ、とうとう言葉さえ飲み込まれる。
にゅるりと慣れた舌使いで彼は私の口内に侵入し、ぴちゃぴちゃと厭らしい水音をたてて私を貪った。


「は、ん…」
「…っにゃ、んあ…むぅ…」


いい加減、息が続かない。
凌牙の胸板をどんどんと叩くと、それが伝わったのかやっと唇を離してくれた。
銀の糸が唇と唇を繋いで、やがて途切れる。口の端に付着したそれを、凌牙の舌がぺろりと舐めとった。
肩で息をする私を尻目に、凌牙はまた胸を弄り始めて、そして、空いていたもう片方の手で私の太ももを擦り始める。


「なあ…、良い、だろ?」
「う、ん。…今更、だよ……」


断らせるつもりなんてないくせに、そうやってわざわざ聞いてきて。ホント凌牙はずるいんだから。
そんなところも、大好きなんだけど。
こくんと頷くと、凌牙は穏やかな表情でフッと笑って、もう一度私に口付けた。




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150426

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