イノセントソーダ
今日も来るのかな、私は店の在庫から取っておいたいくつかのカードパックを取り出しながら呟いた。私のお父さんはカードショップを営んでいて、このカードパックは遊馬くんのために取っておいたもの。遊馬くんはお姉さんにデュエルを禁止されていて、カードもまともに買えないかららしい。そこで私は遊馬くんのために最新パックが出るたびに、こうしてお店の在庫から彼用に分けておいてある。もちろんお父さんの許可はもらってあるし、お金も払ってもらうんだけどね!

お母さんにはどうしてそこまでしてあげるのかって聞かれたけど、遊馬くんは大切な友達だし、本当にデュエルが好きで、いつも楽しそう。私はそんな遊馬くんが好きで、彼が落ち込む姿を見たくないからこうして協力している。そう説明したらすごく楽しそうな笑顔を向けられた。…友達だってば。


「おーい!なまえー!」


あ、ほら、やっぱり来た。窓から外を覗けば遊馬くんが立っていて、私の名を呼んでいた。窓を開けて、裏口から入るよう促す。正面からだとお客さんもいてバレちゃうし、遊馬くんのお姉さんが見ているかもしれないからだ。


「こんにちは、遊馬くん」
「おうっ!なあなあ、取っといてくれた?」
「うん、ほら」
「ぃよっしゃー!サンキューなまえ!」
「ううん、うちも遊馬くんのおかげで繁盛してるしお互い様だよ」


そう、遊馬くんのパックを取っておく代わりに、うちの店の宣伝を彼にはお願いしてある。これは彼からの提案で、こちらも本当に助かっている。学校の生徒が中心だけど、ここ数ヶ月でお客さんが大分増えた。これも遊馬くんが学校ではかなり有名だからだろう。


「へへんっ!俺のおかげだなっ」
「あはは、そうだね。お父さんとお母さんも遊馬くんに感謝してたよ。ありがと」
「いやあ、照れるなぁ!…ん、なんだよ、アストラル。……ああ、そうだよ、ここでいつも買ってんだ」
「……?遊馬くん?」
「あ、い、いや!なんでもない!なんでもないぜ!」


何処か焦ったような遊馬くんは、なんとか話をそらそうとしているらしく早速パックを開けていいかと聞いてくる。もちろん、と頷けばニカッと太陽のような眩しい笑顔で笑いかけてくれた。ホント無邪気だなあ、と見ているといつの間にかもう3パックも開けていて、おお!?と驚きと嬉しさが混ざった声をあげていた。


「どうしたの?」
「くううう!!このカード!スーレアなんだけどさ、欲しかったんだよー!」
「そ、そうなんだ、よかったね!」
「おう!」


私は小鳥ちゃんと同じで、デュエルをしないからカードについてはよくわからない……。カードショップの娘としては致命的だ、お父さんにもよく少しでいいからやってみないかと誘われる。確かに、やってみたいような気もするし、遊馬くんとデュエルをしてみたい。けど……。


「なあなまえはデュエルしないのか?」
「あー………うん、多分やらないよ」
「なんでだよー!」
「秘密!」


私は遊馬くんがデュエルしている姿を後ろから見守っているのが好き。でも、これは恋なんかじゃないよ。だって、私と遊馬くんは友達なんだもん。



0705
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