ミセバヤの庭
※ガラス番外 森がある小屋にいたころ




時刻は子どもたちが喜ぶおやつの時間が近づいてきていた。もちろん、ハルトもこの時間は目を輝かせてカイトにお菓子を強請ってくる。そのお願いを優しく笑いながら叶えてあげるのがカイトの役目の一つだ。本来ならなまえもハルトにお菓子を与える立場だが、つい甘やかしてしまうためか、私も欲しいというなまえにも分け与えている。

さて、それは置いておいて。今日も2人のために甘いメープルの匂いを漂わせるクッキーを焼いたカイトだったが、いつも匂いを嗅ぎつけてやってくる2人が見当たらない。焼きたてのクッキーをテーブルに置いて、2人を探すことにした。恐らく、部屋にいることだろうと思い、まずはなまえの部屋へ行くがどうやらここにはいないようだ。となると、2人共ハルトの部屋にいるのだろう。


「ハルト?なまえ?」


やけに静かだ、もしかしたらいないのかもしれないと不安になりつつ、ゆっくりと扉を開ける。……ああ、よかった、2人ともちゃんといた。ハルト用の小さなベッドで、なまえが身体を縮こませてハルトを抱きしめるような形で2人共眠りについている。規則的な穏やかな寝息が聞こえてきて、つい口元を緩めた。

足音を立てないように静かにベッドへと近づき、傍に膝をついて2人を見守る。なまえの柔らかな髪を一房手に取り、指に絡めてみる。痛みのないその髪はすぐに指から滑り落ちていった。


「……、……ん、ん…?……カイト……?」
「!すまない、起こしてしまったな…」
「ううん………あ、なんか…甘いにおい、する」


うっすらと目蓋をあげたばかりで眠たげななまえは、まだ眠っているハルトに気を使ってか小さな声でカイトの名を呼ぶ。何回か瞬きをして、視界をはっきりとさせたなまえは、カイトに残っている先程まで焼いていたクッキーの匂いを嗅ぎつけて嬉しそうにへらりと笑った。それを見たカイトも、充足したほほ笑みを見せる。


「クッキーを焼いたんだ、なまえの好きなメープルの」
「わあ…!ありがとう、カイト」


でも、まだハルト寝てるから焼きたては食べられないねとなまえが少し残念そうに漏らす。大丈夫だ、また焼いてやるからと返せば、再び嬉しそうに笑顔を見せた。その時、ハルトがもぞもぞと動いて、なまえとカイトは2人して起こしたかなと彼を見る。


「ん…なまえ、ねえさん……?あ、にいさん……」
「ハルト」
「ごめんねハルト、起こしちゃった…」
「んーん…、それより、甘い匂い…」


2人して同じことを言うんだな、とカイトが小さく笑う。さあ、起きたなら一緒に食べようか。兄さん、クッキーを焼いたんだ。




※ミセバヤの花言葉「平穏」



0620
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