抵抗なんてしないで
※「余計なお世話だ」の続き




「なまえー、凌牙くーん、ご飯できたから降りてきなさーい」


下からお母さんの声が聞こえてくる、と同時にチーズの良い香りが部屋まで漂ってきていた。今日のご飯はグラタンか何かだろうか、お腹すいたし早く食べたいなあ。でも、まずはこの状況をどうにかしたいところだ。


「離してほしいなー」
「……ん」
「お腹空いてるんだけどなー」
「…………」


この野郎!
強風が吹きすさぶ今日、家にやってきたと思えば突然、き、キスしてきたと思えばぎゅっと抱きしめてきた凌牙。あれから私をずっと抱きしめたままで、本当に、お母さんが来なくてよかったと思っている。抵抗しようにも、こいつに力で敵わないことなんてわかりきってるからそんな気も起きない、し……それに、満更でもない。凌牙の胸板に顔を埋めるような体勢になっているわけだが、赤くなった顔、見られることがないから、良かったかもしれない……。いや、よくない、抱きしめ、られてるなんて。


「凌牙ってば」
「…もう少しだけ」
「………」


心なしか、ほんの少し凌牙の腕に力が入ったような。凌牙のことなんて、悪友としか思ってないし、それ以上の関係なんて、別に、望んでなんか、ないし。だからさっきのき、きき、キスも…友だちとしての…………なんて。ちゃんと「好きだ」って言葉を聞いたのに、それを無視しようなんて最悪だ。ああ、でも……うう。考え込んだせいか、気づかぬうちに凌牙の服の裾を掴んでいたらしく、皺ができてしまっていた。


「…、悪かったな」
「え?」
「お前はオレと友達でいたかったのかもしれないが、オレは嫌だった。だが、そのせいでお前を困らせてる」
「………凌、牙」
「…嫌なら、早く抵抗しとけよ」


とか、言いつつ、抵抗できないくらいに力を強めているのは誰なんだと心のなかで毒づく。こういうところが、こいつの可愛いところなんだよね。別に、嫌だとは思わない。でも、私にとってはまだアンタは悪友でしかないんだよ凌牙。男として、意識してないわけじゃ、ない。むしろ今この瞬間、意識せざるを得ないじゃない。


「……しないのか?」
「できると思うの、この状況でさ」
「してほしくないからな」
「……ばーか」


「ちょっとなまえ!!凌牙くん!!ご飯冷めちゃうでしょ!!!」

「…行こっか」
「おう」



0619
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