彼らについて
※ガラス番外 Uにてアリト登場直後あたり。主は学校に通い始めました。




二時間続きの移動教室が終わり、教科書と筆箱を抱えながら廊下を歩いていた。普段一緒にいる凌牙くんと璃緒ちゃんとは別の授業を取っているため、どうにか迷子にならないように頭の中にある構内図を引っ張り出す。えっと、確かここを曲がれば…


「おーい!なまえ…さーん!」
「…!わ、アリトくん」


茶色の髪をした、多分一学年(遊馬くんと同じ赤いネクタイしてるし)のアリトくん。この間遊馬くんとデュエルをして友達になった、らしい?遊馬くんが言っていたことだ。私もそのデュエル見てみたかったな。遊馬くん、すごく嬉しそうにアリトくんのことを話していた。まあ、それは置いといて……。アリトくんは何故かよく私に話しかけてくれる。たまに、私の好みとかを言い当てたりして驚くこともしばしば。聞いてもごまかされるけど、悪い人じゃない…し、不思議な人だけど。


「どうか、した?」
「あー、いや、別に!見かけたからよ」
「?そう」


へへっと笑うアリトくん。私よりも少しだけ背が大きいけど、可愛いなと思ってしまう。男の子に可愛いは褒め言葉じゃないとカイトや凌牙くんに言われたけど、思うだけならいいよね?


「…っと、そういえば、前は身体弱かったろ、平気なのか?」
「うん、最近は体力もついてきたし、平気!結局原因もわかってないけど……」
「……………。へえ…良かった」


心底安心した、といったようにアリトくんは肩を撫で下ろしていた。どうしたんだろう、というか誰に聞いたんだろう。よくわからなくて首を傾げていると、アリトくんじゃない別の声が私の名を呼ぶ。この声は……、振り返れば予想通りの人物が笑顔で立っていた。


「あ、真月くん」
「こんにちはなまえさんっ!何をしてるんですか?」
「えっ、アリトくんと」
「…なまえさん一人ですよ?」
「へっ?」


アリトくんがいたところを見れば、……本当だ、誰もいない。どこかに行ってしまったのかな、もう昼食の時間だし、友だちとご飯を食べに行ったのかもしれない。一人納得していると、真月くんが少し深刻そうな表情で囁くように小声で告げる。


「……あまり、あのアリトって人に近づかないほうが」
「どうして?アリトくんはいい子だよ」
「………どうしても、です」
「でも」
「ダメなんです!さ、なまえさんも早く教室に戻りましょう」


教科書と筆記用具を抱えていない方の手を取られ、強く引っ張られる。真月くんは結構強引な人で、アリトくんと同じで悪い子じゃないと思うんだけど、なんだか少し怖い印象を持っていた。遊馬くんのために毎日頑張ってるみたいだし、小鳥ちゃんからはとてもいい子だて聞いてるし……怖いことなんてないはずなのに。ちらりと真月くんの顔を見ると、いつもより、影がかかった……


「………」
「真月、くん………?」
「…いえ、なんでも。それより、今日も遊馬くんたちと一緒にご飯食べるんですよね?僕達は先に行ってますから、なまえさんたちも早く来てくださいね。ふふっ」
「う、うん……」


教室に着くと、真月くんは破顔して先ほどの面影は見当たらない。見間違い、なんてことは……ないと思うんだけど。彼が去ったあと、教室に入ればすぐに璃緒ちゃんが出迎えてくれた。


「遅いから心配しましたわ、もう!」
「ご、ごめんね璃緒ちゃん」
「迷子になってるかと思ったぜ」
「凌牙くんってば!私もう慣れたんだからね」
「あら、それはどうかしら?昨日美術室の場所を忘れて迷っていたところ、見ましてよ?」
「ううう………」




0612
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