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魔女の森任務13


◆任務初日

  ルミナスメイズの森 魔女の森 マリアの広間


お邪魔しております、代表殿。
ガラル軍、第一部隊隊長のイーリスと申します。
先程行方不明者の情報を頂きました。
現地にも多数の軍人が集まっているでしょう。
セナちゃんはガラル軍が必ず見つけ、こちらへお帰しします。

……。
セイルはあなたを信じているようです。
セイルには1番外側の守りを任せているので、運良くたどり着いた人間と接触する機会が稀にあるのです。
私たちよりも、外の人間の気というものに敏感でしょう。
力ずくで入ろう者は殆ど居ませんが、外から来た者を入れることはまずありません。

……。

過去に、強大な力を秘めた者が、外側までたどり着き、私たちの住処を半分ほど壊滅させたのです。

!?

悪戯に壊して去ったのです。
一瞬の出来事、皆を避難させるのに必死でした。
その者と対面したのは、セイルと私だけでしょう。
柔和な表情の青年が1人……私たちの森を半分焼け野原にした直後とは思えないほど穏やかな顔をしていたのです。

……ッ、申し訳ない、その出来事は恐らく、軍には知れていない……

当然です。
外に助けなど求めるはずがありません。
事を起こしたのも同じく外の人間なのですから。

それだけ大規模な火災であれば、森への延焼や、周辺の人間が気づくはずでは……?

火や煙を外側から見えなくすることは簡単です。
ここを隠すのと同じことです。
あなたは外の人間。
中に入ることを許したのは、あなたをここに留めておくためです。

……どういう事でしょうか。

俗に言えば、人質です。

……。
……良いでしょう。
杞憂だと思いますが……

杞憂で構いませんとも。
みんな、結界を張りなさい。

……結界ですか……厳重ですね。
ここにおられる皆が超能力が使えるとは、素晴らしいですね。
私の周りでこういうことができる人間はなかなか聞かない。

代々伝わるものです。

なるほど。
ところで、結界を張っても外の声は聞こえるんですね、良かった。
どなたか話し相手になってくれませんか?

必要ありません。

本来であればマリアさんと大事な話をするつもりだったんですよ。
話を終えたら、私もセナちゃんの捜索活動に加わるつもりでした。
ですがこうも囚われてしまってはそれも難しい。
待つばかりでは捜している隊員たちにも悪い。
少しでも有意義なことをしたいと思うんです。
マリアさんは私の話し相手になってくださいますか?

必要ありません。
あなた一人加わったところで運命が劇的に変わることはありません。

セナちゃんの行方不明は運命だとお考えですか?

過去は全て運命とされたものです。

マリア様……!

……アンシェラ?

その方とお話をさせてください……!
ミリアを助けてくださったお礼もちゃんと言えていません……。
結界があれば、安全ですよね……?

……。
ティグノリア、アンシェラのそばに付いていなさい。

はい。

それともう1つ、私がマリアさんとの話を終え次第、捜索に戻ると仲間には伝えています。
きっと外側で待ってくれているはずですから、どなたか伝えていただけませんか?
私を待つ必要は無い、捜索に加わってくれと。

……フレデリシア。

分かりました。

……頼んだ。

……。(頷く)

マリアさん、捜索が終わった後、私と大事な話をしていただきますよ。

……いいでしょう。







……。
アンシェラさん、私のわがままに付き合ってくれてありがとう。

あっ、いえ、その……ミリアを助けてくださってありがとうございました……!(頭下げる)

大切なお子さんですもんね、お帰しできて良かった。
実際に助けた者へその言葉伝えさせていただきます。


お、お願いします、隊長様……!

よしてくださいよ、様だなんて、そんな大層な人間ではありません。
私はイーリスと言います、そうお呼びください。

イーリスさん……

はい、アンシェラさん。(ニコッ)

……!
素敵……///

……?

あっな、なんでもありませんっ///
ごめんなさい、結界に閉じ込めるなんて失礼なこと……!
助けていただいたというのに……っ

いいえ。
私も捜索にあたりたいところではありますが、マリアさんから留まるよう言われてしまっては動くわけにはいきませんからね。
捜索の依頼を出しているのはあなた方です。
結界を張ろうが張るまいが、護ることはあれどあなた方を傷付けるようなことは決してありません。
ご安心ください。

は、はい、イーリスさん、私、あなたなら信じたいです。
ミリアもイーリスさんのこと大好きみたいで……今は疲れて寝てしまっていますが……

ふふ、そうですね、歩き回って疲れたでしょう。
私たちが抱えてる時もよく眠っていましたからね。
寝顔がとても可愛かった。
私たちみんな癒されてましたよ。

うふふっ、本当ですか?
ご迷惑おかけしていないなら良かったです。

知らない大人が周りにいても泣かずにいられるのはすごいと思います。

あの子だって知らない人は怖いと思いますよ?
ただきっと、あなた方、みんな優しい人だと分かったから泣かずにいられたんだと思います。
……さっき話をして……楽しかったから、またお外に行きたいって……

……そうですか。

……今回は軍の皆さんに見つけていただいたので大事にはなりませんでしたが、もし悪人に出会ってしまっていたらと考えると……怖くてたまりません。
一瞬でも目を離してしまった私に全て責任があるんです。

子供というのは目を盗んで探検したがるものですよ。
常に目を離さずというのもなかなか難しいと思います。
確かに、外は良い人間ばかりではないです。
だから教えなければなりません。

慌ただしくしていました……
この森の中でも、セナちゃんを隅々まで捜して……。
そんな中……、まさかうちの子までいなくなってるだなんて……!
こんな時だからもう、帰ってこないんじゃないかって怖くって……っ

……さぞつらかったでしょう。
あなたばかりの責任ではありませんよ。
困ったことがあれば、必ずお力添えに参りますから、遠慮せず私たちを頼ってくださいね。


はいっ、イーリスさん……!

アンシェラ!
こいつらに乗せられんじゃねぇよ!
こういうツラしてんだよ悪人てのはよ!

あははは、元気だな〜

ティグノリア、イーリスさんに失礼よ!
ミリアを助けてくださったことは確かなの!
それだけでも十分、この方々を信じる理由になるわ!

ありがとうアンシェラさん、大丈夫ですよ。
私もここの方全員にすぐ信用してもらえるとは思ってません。
徐々にでも理解いただければ十分です。

……イーリスさん……

……私は、ここの皆さんに、自由に外とを行き来し、自分の気持ちのままに生きてほしい。



あ、出て行けとか出て来いとか、強制的なものじゃないですよ?
まず軍に強制力は無いですし、言ったことに従わなかったとしても犯罪でなければ武力を行使することは無いですから。
ただ、外は外で素晴らしい。
世界は広い。
知らないことがたくさんあるし、色々な人と出会える。
いい刺激になると思います。

……外は、危ないです……
私たちは、そう教わって……現に外から来た者にここは襲われたんです……!

ここより外にも、女性や子供たちはたくさんいます。
外の人間にも良し悪しありますがね、危険だから出歩かない、というわけにもいきません。
だからこそ、日頃の安心と安全を守るために私たちがいるんです。
街を巡回して、地域の人たちと触れ合い、安否を確認し、どこか異常がないか聞いて回る……

イーリスさんと同じように、優しい方が街を回ってくれるんですか……?

ふふっ、私のようにかは分かりませんが……私が信頼する者も巡回します。
基本的には、総隊長が認めた者しか、軍には入れません。
そして私も、総隊長には全幅の信頼を置いています。

……!

街の人たちも、気さくに接してくれるから私も助かってるんですよね。
私も元は内気な性格でしたから。

……イーリスさんが……?

今はこうやって、今日初めて会った人とも話すこともできますがね。
堂々と胸を張って生きる気持ちや、自分の判断に自信が持てるようになったからです。
相手がどんな人間かなんてすぐには分からないでしょうから、警戒するのは当然です。
もし、良くない人間が何か仕掛けてきても、1人で対処する。
それができるだけの判断力と武力を身に付けることが、ある程度はできました。
この力も、私ひとりで身につけたものではありません。
それを身につけている方から教わったんです。
閉鎖された世界では、それを身につけることも、それを教わるべき人さえ見つけられない。
とてももったいない。

私……、私には……

大丈夫です。
あなた独りではありませんから。
あなたには共に暮らすたくさんの家族がいて……、私も力になります。
……あなたは外に出たことがありますか?

……ありません。

なら、一緒に歩きましょう。
ミリアちゃんも一緒に。
街を回って、美味しいものを食べて、たくさん話をしましょう。
きっと楽しいですよ。
もっと、やりたいことがたくさん出来ますよ。

……イーリスさんが一緒なら……、行ってみたいです……!

ええ、行きましょう。
きっとミリアちゃんも喜びます。
あの子にも、外の世界を知ってほしい。
将来の自分の、選択肢を増やしてほしい。

……。
どうしてそこまで考えてくださるんですか……?
私たちは、あなた方を拒んでいたのに……失礼な態度を……とっていたのに……

私もたくさんのものをもらった側なんです。
これからは恩返しの意味も込めて、分けられるものは分けていきたい。
私が学んだこと、受けた愛情も喜びも、誰かのためになるなら、出し惜しみなどしません。
どうか受け取ってくださいね。

……!
私……
……私には、ミリアがいます。
私の子なんです、本当に。

……ええ。

ここでは、マリア様がルミナスメイズの森の中に住む男性を選別して招き、その男性とこの森の女性の子を作らせるんです。
子を授かると、男性は二度と森に入ることは許されません。
……私もそうしてミリアを授かりました。
だから、ミリアは父親を知りません。
あの人も、ミリアと一目会うこともなくここを出ました。
……私、私の夢は、ミリアに、お父さんの存在を知ってほしい。
あの人さえ良ければ、お父さんと一緒に暮らしたい……

……。

外に出ることが叶うなら、そうしたいなと、思うんです……
いつか、そんな日が来るでしょうか……

……きっと。
私もそれが叶うように頑張ります。

え……

そのためにもやはり、マリアさんと話をしなくてはなりません。

……わ、私も何かできたら……

ありがとう。
それなら、私を信じて……、外に希望を持っていてください。
私のすべきことがはっきりします。

……イーリスさん……




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