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魔女の森任務6


◆任務初日

  ルミナスメイズの森 魔女の森付近


あと200m程で結界の端まで来るわ。
見張りがいるけど、正面から行くわよ。
マリアと話をするためには正式に場を設ける必要があるわよね。

ああ、代表の決定に加え住民にもなるべく同意を得られる状態にしておきたい。
デリケートな問題だ。
一方的な交渉ではないことを証明するためにも、オーディエンスは必要だ。

周りが敵だらけになるわよ?

仲間も、君もいる。
心強いよ。

……怖くない?

……敵の素性が分からないこの段階で、当然油断はできない。
まあ、腸をぶちまけるぞなんて脅すくらいだからな、それほどの力を持っているとするなら、私などひとひねりできるのだろう。

……。

つまり、死ぬ可能性もある。
そのことを、覚悟した上でこの森に入った。

……。

ここで死ぬのは少し早い気もするが、私の役割がここまでだったということなんだろう。

イーリス。

ああ、ごめんな。
隊長を任されたばかりでこれからと言うところ、迷惑をかける。

……。
俺が守るよ。
俺はそのためにここへ来たんだ。
俺の仕事は、イーリスを支えて、守ることだから……イーリスは死ぬなんて考えずに、やりたいことやってほしい。

ありがとう。

……。(うちの勝手に対処するために死を覚悟させてたなんて……、なんて愚かな……)
……ごめんなさい。

えっ?
どうした、急に……

マリアが激昂するようなら私が止めるから、あなたたちは逃げなさい。
二度とうちに関わる必要は無いわ。

……。
いいんだよ。
君がそんなことをしたら、そこに居づらくなるだろう。
これは、君を含めた森の人たちが外の世界を見るチャンスを作るためのものでもある。
そこまでできて初めて私の役割が果たされたことになるんだ。
君には少しだけ私の手助けをしてほしい。
私の力不足ゆえだ、申し訳ない。

そんな……っ

2人から離れろ。(割って入る)



トウヤ!
無事だったか!

……魔女の森の者か?(剣を向ける)

……ええ。
……。
私は2人の味方よ……。(すごく浅い言葉ね……)

あ、トウヤ、大丈夫だ、それは仕舞ってくれ。
私たちに協力してくれる、フレデリシアだ。

……。
……了解。(剣を消す)


……ちょっと、あっさりし過ぎじゃない?

警戒しないわけじゃないが、隊長の言葉を信じただけだ。

……そう。

それに、2人とも俺の姿が分かるようだからな。
その目隠しは一瞬考えたが、俺が剣を持っていることをすぐに咎めた、見えているんだろう。
何のためにそうしているのかは知らないが、理由はあるだろう。
イーリスの言う協力者なら、信じる。

……随分と信用してるのね、この子の事。

信頼している。
不要な嘘はつかないと認識している。
必要な嘘ならそれにも従えばいい。

あ、あはは〜、ちょっと照れるな。

第一部隊はみんなイーリスのこと信頼してると思うよ。

まだまだ日が浅いのに、有難い話だ……

それにしてもイーリスといいあんたといい、軍人は堅苦しいのが多いのね。
もっと愛想の良い言い回しとかできないの?

煽ってる?

説明するのが面倒なだけだ。
簡潔に済ませる。

内輪で話す分にはそんなことないぞ。
うちの部隊でもおしゃべりなやつもいるし。
まあトウヤも今の状況を鑑みて簡潔に済ませてくれたんだろう。
ああ、こいつはトウヤという。
ベテラン軍人だ。

ベテラン……?
若そうだけど……

気にするな。
それより、今はどんな状況だ、説明してくれ。

今回の目的、魔女の森で人攫いが起きたのではという見解、正しかった。
私たちがフレデリシアに出逢ったのは偶然だ。
フレデリシアは魔女の森に住んでいて、今は指示で攫われた子を捜索していたんだ。
これから、魔女の森へ向かい、交渉する。
攫われた子の情報と、犯人に心当たりがないかを教えてもらう。

……こいつに聞けばいいんじゃないか?

……。

まあ待ってくれ。
フレデリシアが私たちに無断で教えたことが知れれば、フレデリシアの立場が悪くなる。
二度と森の外へ出ることができなくなる可能性もある。
今回はフレデリシアには、私たちが軍人として、魔女の森の代表と話がしたいと、森へ連れていくまでを頼んだという体でことを進めたい。

……なるほど。

……教えたくないわけじゃないのよ?
でも、私にもやりたいことはある。
……申し訳ないけど。
……あと、犯人に心当たりは、私には無い。
でも、代表は違うかもしれない……

異論を唱えることも責めるようなこともする気は無い。
ただの確認だ。

……ええ。

それで、連行されてるように見えるよう、目隠しされてると?

あ、見えるから忘れてた。
そうそう、これはフレデリシアの魔法らしい。
周りから見れば目隠ししているんだが、本人は目を覆っている感覚すらない。

……。
変わった魔法だな。

こんな特定の魔法があるわけじゃなくて、鮮明に「こうしたい」ってのがあれば叶っちゃうのよ。

……。
素晴らしい。

それはどうも。

実際にお前の仕事ぶりを見てみたいんだが、こちらも少し別件で動く必要があるかもしれない。
とりあえず、ちょうどいい、確認してほしい。

ん?

こいつを家まで送り届けなければならない。(外套をめくる)

……女の子?

ぐっすりだね。

……ミリア?

お、知り合いか?

……うちの子よ。
でもどうしてあなたの懐に?

森の中でナゲツケサルに追い回されていたところを助けた。
かすり傷だったが、念の為病院に連れて診てもらった。
骨にも異常は無いそうだ。
それからここまでミリアが目指す方向に飛んできたんだが、寝てしまったからどうしようかと思っていたところ、お前たちを見つけた。

……この子が知らない人の懐で眠るなんて……
しかも外の人間の……、というかなんで外に……

やはり魔女の森の子か。
人の感情が色になって見えると言うから、不思議な力を持っていると思っていた。
指さす方向が元々目指していた方向の延長線上だった。
だから、魔女の森に自宅があって、帰る方向がミリアには見えているものだと……

まあ、大体合ってるわね。

それは良かった。

んむ……

あ、起きた?

うっ(ビックリして外套の中に隠れる)

ああ、ごめんね、驚かせて。

ご、ご、ごめんなさい……(スッ)(ものすごく離れた場所まで下がる)

ちょっ、キーウェン離れすぎwwwwww

デ、デカいから怖がらせてしまう……(びくびく)

あなたが1番怖がってるじゃない。
大丈夫、ミリアからしたらこのお兄さんだって大きいし、それくらいで怯えるような子じゃないわ。
……ね、ミリア、出ておいでなさい。

……ねね?

そう、ねねよ。

ねねー!

……良かった……

にに、にに!
ねねいたー!(フレデリシアを指さしながら)

ああ、良かったな。(なでなで)

うんっ(ニコニコ)

ににって呼ばれてるのか?

そう呼ばれてる。

にに、めっちゃ懐かれてるぞ?

お前はそう呼ぶな。
俺はオレンジ色に見えるらしい。

オレンジ色?

悪いやつは黒色に見えるらしい。
善悪でも見分けてるんじゃないか?

オレンジ色は優しい人よ。
色で少しずつニュアンスが違うみたい。

……。

にに、見抜かれてるな。

……。

こう見てると、お兄さんと言うより、父親みたいだな。
お前も、こんな子がいてもおかしくない歳だろ。

……。
お前だって。

まあな。

ににー、たかいたかい、もうない?

ん?
……ねねがいるなら大丈夫だろう?
俺はもう仕事に戻らないとな。

え……えぇぇ……(明らかな落ち込み)

すごくしょんぼりしてる。

いっしょにいこーよぉ……

えぇ……。
お前が森の奥の家に帰るのに、たぶん俺はそこまでついて行けない。
怒られるからな。
お前たちの住んでるとこに入っちゃいけないんだ。
俺は男だからもっと嫌がられる。

ににはいやじゃない!
ゆんちゃのににもににだもん!!(離れようとしない)

ゆんちゃ……って?

ユーリってお友達がいて、その子のお兄ちゃんも一緒に住んでるの。
そのお兄ちゃんのことをににって呼んでるのよ。
今のこの子にとって、男=お兄ちゃんになってそうだけど……

同じ男がいるのにどうしてトウヤがダメなのか、って言いたいわけだな。
まだ幼い子は魔女の森の決まりを知らないのか。

いずれ分かるわ。
男の子は10歳になると、森の外へ出されるの。
外に住んでる父親の元へ行かせることがほとんどよ。
だから森には男はいないに等しい。
当然、父親もいない。



この子だけじゃないけれど……
この子も、生まれてすぐ父親と離れているから、父親の顔は覚えてないし、父親という概念すら、まだ持ってないわよきっと。

……。(だからママとしか言えなかったのか……)

せっかくだからミリアを抱っこしてってくれる?
ミリアが離れたくないって言ってるんだもの。
ミリア、優しいににができて良かったわね〜

お、おい……


うん!
またたかいたかいしてもらうのー!

……。
とりあえず、行けるところまで抱えてもいいが……

それじゃあよろしくね。
あなたにもイーリスとキーウェンにかけたものと同じ魔法をかけておくから。

ああ。




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